都心回帰の再来により、単価の高い都心マンションのシェア上昇が主因
やはり都心の管理費(単価)は高かった
2007年と2009年を比較した場合、埼玉県以外のエリアはどこも単価が下がっているのに、首都圏全体では2%強上昇しているのが分かります。一見すると矛盾しているように思えますが、この点について同研究所は「単価の高い都区部のシェアが高まったことで、首都圏全体の管理費単価も上昇している」と説明しています。確かに、都区部の単価は前年比で下がっているとはいえ、エリア別で見た場合、突出している感は否めません。
参考として、東京23区内でマンションの管理費単価が高い区のTOP5は以下の通りです。第1位の千代田区(約391万円)は首都圏平均(約216万円)の2倍近くの水準に達しています。
<23区内のマンション 管理費単価が高い区 TOP5 (09年)>
第1位 : 千代田区 391.43円
第2位 : 港 区 381.60円
第3位 : 渋谷区 349.74円
第4位 : 台東区 340.98円
第5位 : 品川区 302.87円
管理費の適正水準は、「コストバランス」によって決まってくる
ここで、改めて管理費とはどうような経費なのか、復習を兼ねて確認しておきましょう。マンション標準管理規約では、以下の12項目を管理費としています。- 管理員の人件費
- 公租公課
- 共用設備の保守維持費および運転費
- 備品費、通信費その他の事務費
- 共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料
- 経常的な補修費
- 清掃費、消毒費およびゴミ処理費
- 管理会社への委託業務費
- マンション管理士など、専門的知識を有する者の活用に要する費用
- 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用
- 管理組合の運営に要する費用
- その他敷地および共用部分等の通常の管理に要する費用
ここに挙げた各項目は標準管理規約(=国交省が作成したひな形)によって示された単棟型マンションの一般例です。実際は各管理組合によって違いがあり、たとえば、役員に報酬を支払っていれば「役員報酬」という項目が追加され、警備会社と提携して24時間有人管理をしてもらえば、当然、高額なセキュリティー費用がかかることになります。
このように、マンション居住者に対してどのような管理業務が提供されているか、換言すれば、住民がどういう管理サービスを期待しているかで、おのずと管理費の金額は異なってきます。管理費に差が生じるのは、管理の「質」によるところが大きいわけです。「管理費は安ければ安いほどいい」と言い切れないのは、“コストバランス”が重要だからです。
都区部の管理費単価が高くなるのは、おそらく多様な管理サービスが提供されているからでしょう。色々な付加価値を管理業務に追加したことに原因があるのだと推察します。管理組合で話し合い、不必要な管理サービスを解除してしまえば管理費単価は下げられます。管理費が高いと感じるのは、過剰な管理サービスを受けていることと無関係ではありません。
管理費を下げることは決して難しいことではありません。委託管理会社から受けている管理サービスを「事業仕分け」すれば、一定の効果はすぐに期待できます。管理費の内訳に関心を向けることが重要なのです。今回のテーマである「地価も給与も下がるのに、なぜ管理費は下がらないのか?」――
「なぜ、下がらないのか」ではなく「下げる努力をしていない」というのが、私ガイドの結論です。