メンタルヘルス/(読み物) 文化依存症候群・地域特有の病気

ウィンディゴ精神病(北米):飢えのストレスと人肉食

人食いは人類のタブーで、ハリウッド映画のレクター博士のように、人の心に恐怖を呼び起こします。心の病気の中には、人食いが特徴的なものがあります。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

ウィンディゴとは?
深い森には恐ろしいモノが潜んでいるかもしれません
おなかがへると、機嫌が悪くなったり、イライラしやすくなります。そんな時は、何か甘いものがあれば良いのですが、おなかがすき過ぎると、普段、口に入れないようなモノでも、何だか食べられそうな気がしてくるかも知れません。それでも、絶対に食べてはいけないものがあります。

それは、何と言っても、人間です。おなかがへったからといって、隣の人を食べてしまったら、社会が成り立たなくなってしまいます。人食いは人類のタブーで、人の心に恐怖を呼び覚まします。ハリウッド映画のレクター博士は怖かったですよね。

おなかがへった時に、他人を食べてしまいたくなったら、心の病気です。世界には、これが好発する地域があります。今回は、人食いのタブーが特徴的な心の病気についてお話したいと思います。


深い森に潜む悪魔: ウィンディゴ

北米の五大湖周辺は、アルゴンキアン族と呼ばれるアメリカ先住民の居住地域です。彼らは森の中にウィンディゴ(windigo)という悪魔がいると信じていました。

ウィンディゴは氷の心臓を持つ巨大な野獣の姿をしていて、超自然的なパワーとスピードを備え、人を食べて生きています。獲物である人の姿を求めて森をさまよい、森の中で一人っきりの人をその餌食とします。

アルゴンキアン族にとって、ウィンディゴは吸血鬼や狼男のような存在で、この恐ろしい悪魔もかつては人間でした。

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