メンタルヘルス/(読み物) 文化依存症候群・地域特有の病気

邪視(地中海諸国・中南米):嫉妬・羨望の視線(2ページ目)

嫉妬や羨望の目で見られた人や物に害が及ぶという、邪視は古代バビロニアから周辺諸国へ広まりました。現在では地中海諸国、中南米などで邪視を信じる文化があり、文化依存症候群の一つになっています。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

邪視は魔術的思考の迷信?

他人からじっと見つめられるのは、あまり気持ちの良いものではありませんが、病気の原因を相手からの嫉妬や羨望の目にする邪視の考え方は、例えば、朝、カラスが集まっているのを見て、ちょっと胸騒ぎがした後、財布を落とすといった不運を朝のカラスに結びつけてしまう事に近いと思います。非合理的にある事を他の事に結び付けてしまう事を魔術的思考と言い、心の病気で精神症状として現れる事があります。子供の病気の原因を簡単に解釈できるという点では邪視は便利かもしれません。

邪視の被害に遭うのは子供だけとは限りません。イタリアでは大人の男性が邪視に遭うと肝心な時に役立たずになってしまうそうです。相手が同じ文化を共有していたら、そういう言い訳が通用するかもしれませんが、日本人の男性が邪視で弁解したら、魔術的思考ですね。しかし、どうして邪視は広範な地域に広がっていったのでしょう? 何らかの根拠が地域特有の文化によって脚色されたという見方もあると思います。

ショッキングな光景を見て、ショックの余り嘔吐してしまう事があります。もしかしたら、他人からじっと見つめらた時、小さい子供は嘔吐してしまうほどショックを受けてしまう事があるかもしれません。皆さんは子供の頃、誰かに見つめられて、怖い気持ちがしたような事は覚えてないでしょうか。

次に、じっと見つめる事によって、相手の体調に影響を与える事ができるかどうかを考えてみます。相手をじっと見つめる事によって、催眠状態のように意識状態を変化させる事は可能かもしれません。催眠状態とは一種のトランス状態で、読書に没頭している余り、周囲の事を意識しなくなったような状態と同様ですが、術者によって人為的に誘導されたトランス状態です。催眠状態になると、記憶、感情、周囲の認識が変化し、心拍数が低下したり、反射が鈍くなり、通常は思い出せない過去の記憶を引き出せたりします。もしかしたら、相手を見つめる事によって、相手の体調を変化させる能力をもった人がいるかもしれません。

ともかく、嫉妬や羨望の視線を相手に向けるのはエチケット違反です! 目は口ほどに物を言いますし、邪視を信じる信じないに関わらず、相手に向ける視線には気配りが必要ですね。


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