邪視
嫉妬や羨望の目で見た相手に良くない事が起きてしまったら…?
心の病気の中には、その人の属する社会や文化の影響を強く受けるものがあり、文化依存症候群と呼ばれています。代表的なものとして、突然、ナイフなどで無差別に人を殺傷してしまうアモックや、厳寒期に女性が突然、裸で外に飛び出してしまうピブロクトなどがあります。人前で緊張してしまう、対人恐怖症も日本文化特有の心の病気と考えられていました。

今回は、文化依存症候群の一つで、嫉妬や羨望の眼差しによって病気が生じてしまう、邪視(英語:Evil Eye)を紹介したいと思います。


世界の多くの国で見られる邪視

嫉妬や羨望の目で見られた人や物に害が及ぶ、邪視を信じる文化は日本を含め、東アジアにはないですが、世界の多くの地域で見られます。紀元前三千年頃のバビロニア(現在のイラク)地方では既に邪視が信じられていて、その周辺地域へ伝えられたようです。邪視は東はインド、西はスペイン、ポルトガル、南はサハラ砂漠以北のアフリカ、北は英国まで広がり、コロンブス以後の大航海時代になると、中南米のスペインやポルトガルの植民地へ伝播しました。

邪視の被害に遭う典型的な例として、母親が小さい子供と一緒に外出した時、見知らぬ人が子供をじっと見つめ、「まあ、なんて可愛い子供なの」と賞賛の言葉を口にした時に邪視が起きます。家に帰った後、子供が嘔吐をしたり、熱が出たりすると、その地域の文化では、邪視の力が働いたためと解釈します。

この例の邪視は見知らぬ人が故意に起こしたわけではなく、一種の事故ですが、邪視に遭った時は、すぐさま、子供に唾を吐きかけたり、「いいえ、この子はいたずら好きで、いつも汚れているのですよ」などと言って、相手の賞賛を打ち消し、邪視が効力を発揮しないようにします。もしも、子供が病気になってしまった時は、邪視の力を取り除く儀式を行って治療します。卵を用いたり、呪文を唱えたり、その地域特有のやり方があります。また、邪視に遭わないように、子供にお守りをつけさせる事があります。

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