▼太宰治
太宰治は昭和初期のカリスマ作家で、「斜陽」、「人間失格」など、数々の名作を残しましたが、39歳の若さで、愛人と共に玉川に入水して亡くなりました。死後50年以上経った現在も、根強い人気があり、日々、多くの人が彼の墓を訪れています。
ガイドも国語の授業で、彼の作品である「走れメロス」があったのを覚えています。授業中は、ぐっすりねむりこけてしまう出来の悪い生徒でしたが、太宰治の年譜で、薬物中毒、自殺とあるのが、子供心に「???」と強い印象でした。
彼のトラブルに満ちた私生活は、破滅型作家の典型ですが、精神医学的には(今となっては、診断はできませんが)、境界性人格障害が疑われます。
▼境界性人格障害とは
境界性人格障害の境界とは、神経症と統合失調症の境界という意味で、統合失調症というほどの症状でもなく、かといって、神経症ともいえない状態を指します。感情面の極端な不安定さが特徴で、人間関係に絶えずトラブルがあり、リストカットといった自傷行為や自殺をほのめかしたり、企てることがしばしばみられます。
▼太宰治のトラブルに満ちた私生活
津軽地方の大地主の家に生まれた彼は、左翼思想に接した後、自分の出身階級に悩み、肉親に反発しますが、同時にとても頼っていました。そこには、境界例特有の、見捨てられる事への強烈な不安感から、依存するかとおもえば、激しく攻撃するという人間関係がうかがえます。また、作家として師事していた井伏鱒二との関係も、非常に尊敬してはいるのですが、バビナールという鎮痛剤の中毒になった時、精神病院に無理やり入院させられたことをひどく恨んでしまい、人を善か悪かの両極端で見てしまう境界例特有の価値判断が見られます。上記の薬物中毒、大酒飲み、そして、頻回の自殺未遂(4回)も、境界例としては典型的です。
境界性人格障害の方は、感情面のあまりの不安定さから、自分の能力を十分発揮できない例が多いのですが、彼が、素晴らしい文学の才能を開花できたのは、驚くべきことだと思います。
<注>上記の写真は、津軽・斜陽の家―太宰治を生んだ「地主貴族」の光芒 鎌田 慧 (著)(Amazon.co.jp)から引用しました。
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