職場のストレスは多いし、塩辛いものが好きだし、タバコも吸うし…、高血圧だけではなく、腎臓病も心配だな…。 |
以前は、腎臓病の定義が統一されていませんでしたが、腎臓病治療の効率化を目指し、1995年にアメリカの腎臓財団(National Kidney Foundation)によって、腎機能に応じた5つのステージ(CKD診療ガイド:KDOQI/前DOQI)が定められました。アメリカでは、透析が必要となる率が横ばいになってきていることから、早期発見や早期治療の効果が出ているとみられています。
最近は日本でも、腎機能に応じて5つのステージに分けるCKD(慢性腎臓病)診療ガイドが使われるようになっています。日本腎臓学会によると、慢性腎臓病の患者は増え続け、透析患者は26万人を超えており、毎年約1万人の人が透析をはじめているそうです。慢性腎臓病をきちんと管理することで、透析患者の減少や心血管疾患の減少を見込むことができます。腎機能は「GFR」という値を基にして5つのステージに分けられています。GFRは簡単な血液検査の結果を計算式に入れて求めます。この公式は人種によって異なります。
日本腎臓学会によるGFRの早見表
(注)eGFRの最初の小文字のeは推算(estimated)という意味です。
腎機能を示すGFRは、以下のように(KDOQIを参考)5つのステージに分けられています。ステージ3から腎機能に応じた食事療法が必要になります。また、日本腎臓学会によると、ステージ3(<50)からは腎臓専門医への診てもらうことが望ましいとされています。
ステージ1:GFR>90
ステージ2:GFR60-89
ステージ3:GFR30-59
ステージ4:GFR15-29
ステージ5:GFR<15 または透析をしている場合
食事は腎臓病の治療プランの一つとして欠かせません。食事療法はステージ毎に変わりますので注意が必要です。
腎臓病の食事療法に必要なチェックポイントを紹介します。
カロリー
個人に合ったカロリーの摂取が大切です。適切なカロリー摂取の目的は、毎日の活動のエネルギーを作り出すこと、健康的な体重を維持すること、体がたんぱく質を効果的に使い、筋肉や組織を作り出すサポートをすることです。食事療法にたんぱく質制限がある場合、その分のカロリーを脂肪と炭水化物から摂取する必要が出てきます。ただし、全体的な健康を考え、カロリーは健康的な食物から摂るように気をつけましょう。たんぱく質
個人の状態に適した、たんぱく質を摂取することが大切です。たんぱく質は、筋肉を作ったり、傷ついた組織を治したり、感染などから体を守るために欠かせません。腎臓病の進行に合わせて、たんぱく質を制限することがあります。これはたんぱく質を制限することで、血液中の老廃物を減らし、腎臓病の機能を長く維持するねらいがあります。たんぱく質には、動物性(肉、魚、卵、乳製品)と植物性(野菜、穀類など)のものがあります。どちらもバランスよく食事に取り込むことが大切です。たんぱく質の含有量については、コチラの記事すぐに分かる!食品のたんぱく質量をどうぞ。
ナトリウム
ナトリウムは食塩に含まれます。腎臓病・高血圧とナトリウムは関連しており、ナトリウムを制限をする場合が一般的です。ナトリウムは食塩以外にも、自然の状態の野菜、果物などにも含まれます。また、パンや麺などの加工品にも含まれています。塩についての詳しい情報は、おいしく作る「塩分控えめ料理」のコツを参考になさって下さい。
リン
腎臓病の進行によって、血液からリンを効率的に取り除くことができなくなります。リンが高くなると、皮膚がかゆくなったり、骨からカルシウムが引き出されることによって骨が弱くなり、骨折などの原因にもなります。リンは、特に乳製品、豆類、ナッツ類、ビールなどに多く含まれます。カルシウム
カルシウムは骨の健康に欠かせないミネラルです。しかし、カルシウムが豊富な食品は、リンを多く含む場合も多く、注意が必要です。腎臓病の治療の一環として、カルシウムや特殊な形のビタミンDのサプリメントが処方されることもあります。カリウム
カリウムはミネラルの一つで、筋肉や心臓の働きに欠かせません。血中のカリウムは少なすぎても、多すぎても大変危険な状態につながります。検査値の結果によっては、食事から摂取するカリウム制限が必要な場合があります。水分
腎臓病が進むと、水分の制限が必要になってくる場合があります。水分制限の必要が無い場合でも、カリウムやリンの制限がある場合は気をつけましょう。例えば、オレンジジュースはカリウムが、ビールにはリンが多く含まれます。ビタミンやミネラル
ビタミンやミネラルは健康管理に欠かせない大切な栄養素です。しかし、たんぱく質、カリウム、リンなどを制限すると、知らないうちにビタミンやミネラルが不足する場合があります。総合的にバランスのよい栄養摂取が大切であることを意識しましょう。腎臓病の食事療法とは、長い付き合いになりますので、食事の制限が厳しすぎて、ストレスになるようでは問題です。糖尿病の人や妊娠をしている人は、特に個人に合った食事・栄養プランが必要になります。本当に制限が必要なのかをチェックしたり、バラエティーに富んだ食事を楽しむためにも、管理栄養士に相談してみましょう。
ステージ別のたんぱく質量やエネルギー量などはこちらをどうぞ。
慢性腎臓病の食事療法:後編(ステージ3・4)
慢性腎臓病の食事療法:中編(ステージ1・2)