食事療法に困ったら管理栄養士に相談しましょう! |
慢性腎臓病ステージ3・4の食事療法
引き続き、腎機能に応じて5つのステージに分けるCKD(慢性腎臓病)診療ガイドをベースにした食事療法を紹介します。ステージの区分についてヘ、腎臓病の食事療法(前編)をご覧ください。今回は、腎臓病の食事療法が必要になるステージ3・4についてです。ステージ3・4の治療は、ステージ5である透析を遅らせたり、避けるために重要な時期になります。
たんぱく質について
ステージ3・4ではGFR(糸球体濾過量)が下がり、15~59くらいになります。このステージ3・4ではたんぱく質の管理が必要です。たんぱく質の摂取目安量は体重1キロ当たり、0.6~0.8gです。GFRが25くらいまで下がると、体重1キロ当たり0.6グラムのたんぱく質制限が必要だとされています。体重が60キロの人の場合は、1日のたんぱく質の摂取量は36g~48g(0.6g-0.8g/キロ)が勧められるということになります。重さを測らずに、たんぱく質を推測する方法は、以前の記事「すぐに分かる!食品のたんぱく質量」を参考にして下さい。
たんぱく質は、肉、魚、卵、乳製品、豆製品などに多く含まれますが、ごはんや麺類などのでんぷん類、野菜や果物にも含まれます。アメリカの腎臓財団のCKD診療ガイドラインでは、質の高いたんぱく質(high biological value)として、脂身の少ない鶏肉、魚、大豆製品、植物性のたんぱく質を挙げ、これらの食品から、50~75パーセントのたんぱく質を摂ることを勧めています。
エネルギー量について
たんぱく質の制限に伴い、摂取カロリーが少なくなることも多く、体重が減りやすくなります。一般的に、必要なエネルギー量は、体重1キロ当たり30~35カロリーです。体重が60キロだったとすると、必要なカロリー量は1800~2100カロリー(30-35カロリー/キロ)になります。しかし、必要なエネルギー量は、個人の体格や活動量のよって大きく左右されます。計算で求めたエネルギーは、あくまでも目安ですので、必要以上に数値に固執する必要はありません。自分の体重を定期的にチェックして、体重が減っていく場合は、食事の量を増やすように努力しましょう。慢性腎臓病では高脂血症になるリスクが上がると言われています。カロリーを上げるために油を多く使う人も増えると思います。高脂血症の予防を意識して、飽和脂肪酸の多いバターやマーガリンではなく、オリーブオイルやキャノーラオイルを使うとよいでしょう。
カリウム
カリウムの制限は、ステージ3・4でも特別必要はありませんが、血中カリウムが高い場合や、尿の量が減ってきた場合(1日1000cc以下)の時などは制限が必要なケースもあります。また、高血圧の治療等でACE阻害薬を服用している人は、血中カリウムが上がってしまうこともあるので注意して下さい。貧血
慢性腎臓病が進み、クレアチニンが高くなるにつれて、貧血になるリスクも上がってきます。また、たんぱく質制限により、食事からの鉄分の摂取も少なくなりがちです。貧血になると、疲れやすくなったり、体が弱くなったりします。これらは、物忘れ、食欲不振などにつながったり、寒さが極度に苦手になったりと、生活の質の低下にもつながります。食事から鉄分がとれない場合は、専門家にサプリメントの摂取等を相談しましょう。塩分
日本人の食卓では、食塩の制限はなかなか難しいのが現実です。日本では、慢性腎臓病の場合、食塩摂取の目標を6~7gほどにする場合が多いようですが、他の国では4g以下の制限が目標とされているケースも見られます。香味野菜やスパイスを使用するなどして、塩分カットを工夫しましょう。食事制限をすることで、健康維持には欠かせない、ビタミンやミネラルも不足しやすくなります。特にビタミンB群、亜鉛、鉄、カルシウムなどは不足しがちです。ステージ3からは、腎臓病の状態や検査値などをもとに、食事療法について管理栄養士に相談するとよいでしょう。