上司によるいやがらせ「パワーハラスメント」(パワハラ)は、終身雇用制の崩壊した日本で、今とても深刻な問題です。組織人事コンサルタントの永井隆雄さんにお話をうかがいました。
近年、上司によるいやがらせ「パワーハラスメント」が話題となっていますが、 これは具体的にいうとどういうものなのですか?
永井 上司が部下に言葉や態度による暴力を振るったり、できもしない執拗な要求で精神的に苦痛を与えることです。
ここで問題となっているのは、上司にとって部下に精神的苦痛を与えることが目的化しているために、指導育成や業務上の命令などに隠れて表面化しにくいことです。
欧米でも、モラル・ハラスメントとして研究がされていますが、英語ではブリー(Bully)という表現が一般的です。パワハラは和製英語で、私は「ボスハラ」と呼んでいます。
企業には、人事評価の指標として目標管理などの制度がありますが、できもしない目標を掲げさせ、あるいはノルマを与えて達成しなかった場合、徹底的に部下を精神的に追い詰めることが、パワハラの特徴のひとつとしてあげられます。
なるほど、「おまえはダメだ!」「やめちまえ!」なんて言葉や態度で侮辱するのは、立派なパワハラなんですね。
永井 そうです。今までは終身雇用制度に守られていたため、言われる側も、「がまんすれば辞めさせられることはない」というある種の余裕がありました。しかし、今は終身雇用制度が崩れ、さらに不況による経営不安や雇用不安も影響しているため、雇用が奪われるのではないか、追い詰められて辞めさせられるのではないか、という焦燥感もあり、深刻な問題となっています。また昔と違い、今は追及が執拗になっているようです。