具体例
ここ半年ほど悩まされている、お尻の痛み。50代の女性医師Aさん。痛みは段々と強まり、痛さのあまり診察室で患者さんを前にしても、長時間座っていられません。時折、椅子から立ち上がり、苦痛に満ちた表情で診察室を歩き回る彼女。同僚が目撃しています。職場から帰宅すると、彼女は夫にお尻のマッサージを頼みます。痛さの余りなかなか寝付けないので、眠るまで夫はお尻のマッサージ。朝、目が覚めても、痛さのあまり起き上がれません。痛みが和らぐまで、夫にマッサージしてもらいます。
病院に行き、いろいろな検査を受けたのですが、悪いところは見つからない…。夫や周囲の人は、彼女の痛みの訴えが理解できず、しまいには、マッサージを続けていた夫は怒り出す始末。最終的に精神科を紹介され、疼痛性障害と診断。治療として抗うつ薬が処方されたところ、2~3ヶ月して痛みはおさまったのです。
では、Aさんの痛みはどこから来たのでしょう?はっきりした心の原因は分かりませんが、彼女は心の中で夫から愛情を求めていたのかもしれません。しかし、「愛が欲しい」とはっきり口にすることができず、心の中で葛藤が生じてしまい、それが痛みとなって現れたのでしょうか。夫のやさしいマッサージが彼女の求める愛情の代替だったのかもしれません。
疼痛性障害は決して稀な心の病気ではなく、他の診療科から紹介される心の病気の内では大きな割合を占めています。原因のはっきりしない痛みの場合は疼痛性障害の可能性をお忘れなく。
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