---なるほど。でも日本で広まらないのはどうしてなのでしょう?
社員が期初に業務上の目標を上司に報告し、それが期末になってどの程度達成されたかを検討し人事考課と連動させて評価する人事制度。 本来は、目標を明確化することで社員のやる気と自律を高めるというねらいがあるが、実際は目標に対するパフォーマンスを検討するだけで、改善につながるフィードバックを十分に行っていないところが多い。 また、上司はノルマの割りつけのみに利用したり、また社員は低い目標で達成度をアップさせることを主眼に当初から目標を立てるなど、本来のねらいと現実には、かなりの乖離があるとして問題視されることも少なくない。 |
しかし、ストレスやうつ病などに対して社会的関心が高まっていますし、体調不良が実はうつ病によるものだったということも珍しくありません。さらに、ビジネスマンの自殺も問題になっており、これも多くの場合、職場のストレスと関連しています。
米国でも同じような状況があり、社員のメンタルへルス対策が積極的に検討されるようになりました。
しかし、日本の企業ではどうでしょうか。人件費や経費の節減ばかりに気を奪われ、具体的な動きは鈍いようです。むしろ個人をますます追いつめると悪評高い、「目標管理制度※」の導入などに熱心な会社が多いのではないでしょうか。
---たしかにその傾向はあるかもしれませんね。しかし、日本の企業にも社員の健康管理などの福利厚生がありますが、これとはどう違うのでしょうか?
永井 電気工事など危険作業を伴うメーカーなどでは、いち早くメンタルへルスの取り組みが行われてきました。
この種の会社では、定期的な心理検査によってメンタルな健康度合を測る取り組みがなされ、問題のある社員にはきちんと治療を勧めて、時間をかけて社会復帰する配慮がなされてきました。
それでも、「心の病など瑣末な問題」という認識が強く、精神疾患は誰もがかかりうる病気であり、ストレスが生産性に悪影響する、という視点は十分ではなかったかもしれません。
多くの企業における健康診断も、内科的なものに限られ、職場のストレスや精神疲労に目を向けること自体がタブー視されてきているように思えます。
また、凶悪犯罪の報道などの影響で、心の病は特殊な人がひきおこす病気であるという印象を植えつけられている傾向があることも否めません。
---社員の誰もが心の病をひきおこす可能性がある、などと真剣に捉えているところはまだ少ないかもしれませんね。
気分が高揚したり、なにごともうまくいくような気持ちがするなど、精神的にはむしろ調子がよくなると感じる病気。 アイデアがどんどん飛び出し、とめどなく話をするなどの症状も現れるがとりとめもない話ばかりであり、話をそらされたりすると、激怒することもある。 また、言動に抑えがきかなくなり、あとで後悔するような行動を取りやすい。そうの状態が終わった後に抑うつ状態に陥り、そうとうつを繰り返すことがある。 |
たとえば、そう病※の発作が現れたときには本人はハイテンションになるため、外見には仕事熱心なだけと見過ごされることもあります。しかし、うつ病などよりもはるかに怖いもので、本人もこの病気によって信用を落とし、社会復帰が難しくなることもあります。
また、心身症は心の病が体の症状として出る病気で、代表的なものには、出勤や重要な会議の時間が近づくとトイレに行きたくなる過敏性大腸症候群などがあります。心の病により体に症状が現れてしまっては、仕事の能率が上がるはずもありません。
いずれにしても、これらの病気の早期発見と解決には、経営トップの理解が欠かせません。
しかし、心の病はプライベートな問題でもあります。企業の人事部がよかれと思って取り組んでも、社内では積極的に相談する気になれないかもしれません。
下手に相談したら、リストラされるかもしれないと考える社員がいても無理はありません。社員のプライバシーを守るためにも、外部に委託することが必要になります。
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