ビジネスを育てる

ポール・ホーケン著 阪本啓一訳
体 裁: 単行本: 279 p
サイズ(cm):20
出版社: バジリコ
ISBN : 4901784641 発行日: 2005/04/11




欠陥だらけとはいえ、ビジネスこそが、人類が自らをアート、文学、劇場、そして社会活動として表現できるまっとうな手段なのだという。著者のビジネス経験を元に、時代や国境を超えた「ビジネスの本質」を説く、ベンチャー経営者のためのバイブル。世界で200万部のロングセラー。

●今週の選書について

本書は、米国ではじめて自然食料品店を開業するなど複数の会社を立ち上げ、さらにコンサルタントとして会社の再建も手がけてきた著者がその経験に基づきビジネスの本質を説く起業のバイブルです。

米国で17年前に発刊された本書は、以来31の言語に翻訳され、50を超える国で読まれました。この手の本にしては驚異的な、200万部が売れ、今も売れ続けている超ロングセラーです。

ビジネスの立ち上げ方を綴った本はたくさんありますが、立ち上げたビジネスの育て方に触れた本は多くありません。しかし、本当に難しいのは、立ち上げたビジネスを育てることなのです。本書は、その点にフォーカスしています。



本書の良いところは、学者や経営コンサルタントといったビジネスの専門家と呼ばれる人たちが、当たり前のこととして公言してきたことに、実践者として真っ向から疑問を呈している点です。

たとえば、よく「起業家が失敗するのは資金が不足するからだ」といわれます。これに対し、本書は「スモールビジネスにお金がありすぎることは、足りないよりもっと悪い」と言います。

その意味するところは、お金がありすぎることで、起業家が考えることを放棄してしまうからです。お金があれば安易に専門家が雇え、外注もできます。結果、会社は自ら学ぶ貴重な機会を失います。

本書には、具体的なノウハウは書かれていませんが、それよりもずっと大切な心構えや考え方をたくさん紹介してくれます。小手先の方法論よりも、まず真の成功者の教えに耳を傾けるべきです。

起業したばかりの方、いつかは起業してみたい方はもちろん、自分のキャリアを何とか変えたいと思っている人にも、ぜひお読みいただきたい一冊です。

●不足しているビジネスの育て方のノウハウ

冒頭であげたとおり、“ビジネスの育て方”に関するノウハウは、“ビジネスの立ち上げ方”のノウハウに比べると、格段に不足しています。

理由のひとつは、そのようなテーマでは本が売れないからだと思います。たしかに起業希望者はたくさんいますが、その中から実際に起業する人はそれほど多くありません。

出版社なら、わざわざすそ野が狭いテーマよりも、すそ野が広い“ビジネスの立ち上げ方”に関する本を出したいのは当然です。資格学校が1次試験の講座にばかり力を入れるのと同じ理由です。

こうした出版社の事情はさておき、ビジネスは育てるほうがずっと困難です。起業する人が少ないことばかり問題視されていますが、せっかく立ち上げても、10年生き残れる会社はわずか5%しかないのです。

インターネットの普及や1円起業など、起業のハードルはかつてよりずっと低くなっています。参入しやすくなった分、撤退する人の割合はさらに増えるでしょう。

このように考えると、本書のような“ビジネスの育て方”に関するノウハウは、これからもっともっと求められるはずです。



ただ、どんなに本書のような書籍が示唆に富み、学ぶところが多くても、ビジネスを育てる方法は、つまるところ起業家自身が試行錯誤の中で、自ら学んでいくほかありません。

最近は、M&Aなどの手法が知られるようになり「ビジネスなどお金さえあれば買えばいい」と安易に考える人もいるようです。しかし、そのビジネスとて、維持することは容易ではありません。

ビジネスは、何十年も続けるものです。順調満帆な会社であっても、いずれ屋台骨を揺るがすような大波にも襲われることもあるでしょう。そのとき的確な舵取りができるためには、起業家自身が日ごろから、自らの経験の中で地道に学んでいくほかないのです。

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