来年、2007年は団塊世代が一気に定年を迎える年。「定年後は自分でビジネスをしたい」そんな声を聞くことも多いのではないでしょうか。週末起業家のなかにも、「定年後を見据え、会社にいるときから自分の事業を育てている」という人が多いようです。たしかに、60歳を過ぎて新しい事業に立ち向かうのは、体力、気力ともに少々しんどいものがあるのでしょう。だからこそ、週末起業で市場にアンテナを張ってみたり、手ごたえを確かめておきたい、という人が少なくないのかもしれません。

人脈は社外にこそ広げよう


大手家電メーカーのデザイン部門にいた松田恵一さん(仮名)も、定年を迎えるまでは週末やアフターファイブを利用し、さまざまなビジネスにチャレンジしていました。たとえば、系列子会社の看板デザインに、カタログ制作。知人のデザイナーのアシスタント役を自ら買って出、精力的にデザインの仕事をこなしたそうです。大企業に勤めながら、こうした積み重ねをしてきたのは、あくまで定年後の独立を見据えてのこと。同時に、好きな日本画を趣味で描きつづけ、会社とは違う自分の世界を追求してきました。そして62歳を迎えた今、松田さんは自宅で近隣の主婦を相手に日本画の教室を運営しながら、デザイン工房を開き、グラフィックデザイナーとして活躍しています。会社員時代に開拓した、カタログ制作会社の人脈が起業の大きな原動力となったそう。月収は会社員時代の半分ほどですが、住宅ローンなど、生活コストのかさんだ働き盛りの頃と違い、さほど苦にはならないといいます。

「会社にいたときは、どちらかといえば不良社員でしたね。仕事そのものは好きでしたが、周囲に歩調を合わせたり、上司に仕えたりするのが苦手だったんです。しかし、それがかえって幸いしたようです。自分の世界をもっていたおかげで生涯、現役で働ける場所を確保することができました」という松田さん。60歳を過ぎた人とはとても思えないくらい、若々しい表情が印象的でした。

資格取得や腕試しは早めに


植木職人として独立した酒井公さん(仮名)も、通信機器メーカーの現役時代から準備を重ねてきたひとり。もともと大の盆栽好きだったという酒井さんですが、趣味が昂じ、造園施工管理技士、造園技能士資格を取得するなど、いつのまにかプロ同然の腕前となっていたそうです。趣味の延長として、ほうぼうの知人の庭の手入れをしていましたが、あるとき、「定年後はこれで食べていこう」と思いたってからは、本格的に熱を入れるように。ちらしをまくなど、大々的な宣伝もおこない、全力で週末起業に取り組むようになりました。その後、定年を前に、早期退職応募に応じて一足早く独立。現在はプロの植木職人として一本立ちされています。

趣味を極めて幸せな定年後を手に入れる


若いうちから、定年後を見据え、好きな趣味を生かした週末起業を続けている人もいます。鉄道模型をネット販売している、山田太郎さん(仮名)です。超大手企業に勤める山田さんは、もともと鉄道模型のコレクターでした。鉄道模型は少量・限定生産されるものが多く、一度買いもらすと長期間、再発売を待つことが多いといいます。そこに目をつけた山田さんは、鉄道模型問屋さんと提携し、ネットやファクスで受注するビジネスを始めました。ちなみに扱う商品は、マニア垂涎の「HOゲージ」と呼ばれるもの。希少なタイプだけに、製品説明には専門的な知識や視点が求められます。自身が大のマニアという山田さんには、まさにうってつけのビジネスだったわけです。

定年後に実店舗を持つことを視野に入れている、という山田さん。ご本人は30代とまだお若いのですが、これには「なるほど」と思いました。確かに週末起業で始めたことには、定年がありません。退職してからもずっと続けられます。定年したとたん、再就職先探しに血眼になったり、会社にしがみついたりする人生よりも、ずっと豊かな生き方ではないでしょうか。「定年退職が待ち遠しくなる…」そんなところも、週末起業の魅力なのだということに、山田さんは気付かせてくださいました。

独立・開業には助走が必要です。定年を迎えてから走り出すのもよいのですが、なるべくなら現役時代のうちから力試しをしておくに越したことはありません。定年は確実にやって来るのですから、少しでも早く行動を起こすことをお勧めします。

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