企業のIT活用/システム導入事例

動かないコンピュータ(2ページ目)

日経コンピュータの人気コラムがとうとう単行本になりました。本の紹介と私の動かないコンピュータ事例の紹介です。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

言えない間にプロジェクトが火をふく!

プロジェクト管理をまかされたのですが、開発体制としては社員&パートナー企業社員&契約した個人(プロ)の混成部隊でした。

上司からは自分より年上の人もしっかり管理しないといけないと言われていました。こちらは20代のまだまだヒヨコのようなもので、特にプロの方(40代)は、20年近く業界を渡り歩いてきた方ですので、そううまくはいきません。

また、この時は、お客さんも外部へ依頼する初めてのシステム開発で、要領がよく分っていませんでした。仕様の確定が遅く、最初の頃は仕様が出ないので、手持ちぶたさになるような最悪の状況でした。

プロの方は、成果物対応の出来高払い契約ですので、なるべく仕事を早く仕上げて、別プロジェクトに渡っていった方が実入りはよくなります。

最初は「早く仕様を確定してくださいよ」と私に言っておりましたが、その内に自分で勝手に仕様を決めて作り初めてしまいました。

客先に早く仕様を確定しないと、納期厳守は無理ですよと、もっと強く言えば良かったのですが、なかなかこれもバシッと言い出せなく、ずるずると・・・。

また、プロの方には客先との仕様の確定のバランスをとりながら開発してもらうのがベストだったのですが、そんな高等技術が駆使出来るには経験不足でした。

火がふいたプロジェクト

結局はプロの方は独自仕様でプログラムを完成させ、さっさと別プロジェクトに移っていっちゃいました。

客先から、やっことさ出てきた仕様と照らし合わせると、半分ほど違っていました。結局、私の方で全面的に修正を行ないました。

今でしたら、プロの方には、
「ちゃんと動くものを作るのが契約したプロの仕事です。客先の仕様の確定を急がせるので、ほぼ大丈夫なところから作り初めてください。ただし手戻りの発生は当然、考えておいてください。」

と言うでしょうし、客先には
「当初の仕様確定予定日から、大幅に遅れています。何とかがんばって納期は守るように努力しますが、限界があります。今週末までに仕様の確定ができない場合は、申し訳ありませんが、課長名で当社宛に一筆入れてください。」
と言うでしょうね。

さて、開発の方ですが案の定、遅れはじめ、結局は上司に相談して火消しを頼むことになりました。

火消しを頼む

火消しというのは文字通り、火が吹いたプロジェクトに投入される助っ人です。
火消しを呼ぶ<br>
火消しを呼ぶ

この時は、大阪のプロジェクトだったのですが、上司が東京本社から1ケ月ほど、火消しを呼んでくれました。

来られた方は実に経験豊かで、客先とのミーティングにも出ていただき、客先を巻き込んで仕様をどんどん決めていきました。

全体のプロジェクト管理は私の方で、担当していましたが、疲れきったメンバーを鼓舞して、明るい雰囲気に変えていくなど、こういうシステムエンジニアにならなくてはと、まさにお手本のような方でした。

結果としましては、半月ほどの遅れで何とか収束させることが出来ました。火消しがいなければ、もう1ケ月は遅れたと思います。ただ収支的には当然、赤字でした。

やはり色々な失敗経験から、学んでいくしかない世界です。


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あの秀吉も織田信長の乳兄弟であった池田恒興に言い出せなく、プロジェクト管理を失敗しています。
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