さて、ITベンダーからはこの数字がそのまま出てくるわけではありません。次に上司に提出されて、いわゆる政治的判断が行なわれます。
運用の仕事が取れるか?
まず考えられるのはシステム開発後の運用の仕事が取れるかどうかです。システム開発に10のコストがかかるとすると運用にも同様に10もしくはそれ以上かかります。システム開発を行なった後、運用面で色々と修正作業が出てくることが予想されます。その仕事が継続的に受注できるかどうかが1つの判断となります。
通常、修正はシステム開発を頼んだITベンダーに修正してもらうのが中身もよく分っており効率的ですので、よほどのことが無い限り、ITベンダーを変えることはありません。 運用時点で、少々高めの見積を出しても通りやすくなります。
つまりシステム開発で少々安めの金額を出し、運用の方で利益を出す損して儲けよ作戦です。これの極端な例がいわゆる公共事業のシステム開発であった1円入札です。
実績を作りたい場合
またITベンダーがその企業での開発実績作りをしたい時などにも、安い見積もりを出すことがあります。 これは組合の幹事会社のシステム開発を受注すると、傘下の企業なども右へならえで獲得できそうな場合です。つまり芋づる作戦ですね。いかがですか、けっこう色々な要素で価格が決まることをご理解いただけましたか?
ITベンダーの言い分
発注側から見ると、見積が適正かどうかなかなか判断しにくいと思いますが、もちろんITベンダーさんの方にも色々と言い分があります。 まず、発注側から出てくる仕様が不確定で、見積リスクが大きいことがあります。 細かく仕様を決めていく段になって、これも入れて、あれも入れてと次々と要求が出る場合です。発注側のITスキルを見て、そういう事態の発生が予想される場合には、ITベンダーとしてはリスクを見込んで過大な見積を出さざるを得ません。
仕様確定のスピード
もう1つ、仕様確定がすぐできる発注企業かどうかです。 見積段階では大きな枠組みでの仕様は決まっていますが、細かな詰めは発注側とITベンダーが協議しながら進めていきます。この時に発注側にどういう人が出てくるかでITベンダー側のコストは大きく異なってきます。即断、即決で権限を持って仕様を確定できる担当者であれば、ITベンダー側も開発に力をそそげばすみますが、困るのが判断保留タイプです。 開発が前に進まず、かと言って、納期遅れはITベンダーのせいにされる為に、余分なプログラマなどをアサインして遅れを取り戻したりする必要が出てきます。
では適正価格にするには?
政策的判断はどうしようもないので、上記のITベンダー側の不安を払拭すれば適正価格に近づきます。1.発注前に専門家に相談する
ITベンダーに出す仕様についてはプロに一度、見てもらいましょう。 ITベンダー側で見積する時に、システム的に難しくなる箇所、判断しにく箇所などを指摘してもらって修正すれば、その分安くなります。
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2.ITベンダーの不安を払拭する
ITベンダーと仕様の詰め方や仕様確定日の約束などを確約しておくとITベンダー側としてはリスクを低く見積ができ、本来のシステム開発の費用に近付きます。 約束を守れない時は発注側が責任を持つとしておけばよいでしょう。
3.提案依頼書を作成する
ITコーディネータがよく支援するやり方です。 仕様書ではなく、こういう経営上の悩みを解決するシステム、こういうことができるシステムという発注側の要望を提案依頼書(RFP)としてまとめて、ITベンダーに呈示します。
※RFP Request For Proposal
この時にある程度の予算枠を呈示しておくのも方法の1つです。ITベンダーに要望を実現するためのソリューションを予算の枠内で提案してもらいます。
こうすれば発注側で予算の範囲内で一番良いソリューションを選ぶことができます。
ぜひ、参考にしてください。