出発点を決める
まずは、システム統合の目的を決めます。顧客の視点で考えると、統合によって顧客に迷惑をかけないになります。「顧客に迷惑をかけない」ということは「顧客に対するサービスを継続する」と言いかえられます。そのためには何をすべきでしょうか?
複雑な銀行システムではプログラムの量も膨大です。3行のシステムを統合するのが、いかに大変な作業かはシステムを扱っている人間でしたらよく分かります。
チャートを作る
3行のシステム担当役員や担当者などが集まった時に、いかに大変な作業が待ちかまえているか、容易に類推できたはずです。解決策を導き出す時に、効果的なのがチャートを作成して議論する方法です。顧客に対するサービスを継続するためには、システムのテスト期間を十分にとりしっかり準備するが必要とし、矢印を出しました。これは1例ですが、こういうチャートを作成しながら、皆で議論します。
共通言語を作る
文章などでやり取りせず、図解やチャートなど皆が一目見たら共通認識できるものを用意します。これが共通言語となります。議論して、どんどん矢印や必要な項目を加えていき、出来たチャートを共通認識とします。作業では、システムの細かな話はしません。もちろん議論には経営層に入ってもらい、最終確認をもらいます。
プロジェクトマネージャの任命
次は、プロジェクトを取り仕切る人物を決定します。みずほの場合にはゴタゴタ騒ぎの中でプロジェクトマネージャが不在になってしまったようですが、3行の経営層が話し合って、大きな権限とバックアップを与える必要があります。プロジェクトを取り仕切るマネージャの使命(ミッション)は期日までに品質基準を守ったシステムを作り上げることです。たとえ、他行から横やりが入ろうが、出来ないことは出来ないと主張できなければなりません。時には喧嘩ともなりますので、大きな権限と経営層のバックアップが必要になります。
議論は共通言語で行う
議論には、先ほどのチャートを使います。例えば、今回のような3行のシステムを残す案が出された時は、「システムテスト期間を十分に取り」に×を入れ、これによって、「顧客にサービスを継続できる保証ができない」→「顧客に迷惑をかける恐れがある」と展開して、議論します。大規模なシステムほど、こういう基本的なチャートを元に議論しないと、どんどん枝葉の問題などに拡散されていまいます。もちろん中小企業でも十分に活用できます。
また、チャートが顧客の視点から出発していますので、最終的に顧客に対するサービスだけは守ることができます。
昔、ある銀行の小規模なシステム開発のプロジェクト・マネージャを経験しましたが、実に大変な作業でした。みずほのシステム部門の現場がどういう修羅場になっているかはよく分かります。ぜひ、皆さん他山の石とせず、学びとりましょう。
システム統合を成功させるチェックポイント |
1.統合の目的に顧客という言葉を入れる |
2.チャートなど共通言語を作り、議論する |
3.使命感に燃えたプロジェクトマネージャと経営層のバックアップ |
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