企業のIT活用/IT経営の基礎知識

失敗しないIT投資の判断方法 DCF法(2ページ目)

IT投資をすべきかどうかは効果(リターン)を考えて判断します。そのための手法としてDCF法と簡便法をご紹介します。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

DCF法

反対に言えば1年後の100万円は現在の価値に割り引いて考えないといけません。例えば100万円を5%で割り引くて現在価値を計算すると95万円になります。

このように計算する方法をDCF(Discounted Cash Flow)法と呼び、投資を行うかどうかの判断でよく使われます。

  1年目 2年目 3年目 3年目 5年目
純利益 100 100 100 100 100
現価係数 0.95 0.90 0.86 0.82 0.78
現在価値 95 90 86 82 78
(注;現価係数は割り引きをするための係数)


上記は5%の割引率で計算した結果です。5年間の現在価値のトータルは約431万円になります。ところで現在のような経済環境では少し難しいのですが100万円の投資に対して10%のリターンが期待できるとしたらどうなるでしょうか?

  1年目 2年目 3年目 3年目 5年目
純利益 100 100 100 100 100
現価係数 0.90 0.82 0.75 0.68 0.61
現在価値 90 82 75 68 61


5年間の現在価値のトータルは約376万円になります。この場合は投資額が400万円ですので、投資を行っても5年間では回収することができない投資案件になってしまいます。つまり400万円をどこかに預けて運用した方が得だということです。

ただ上記の例はIT投資を行った設備に対する減価償却費を考慮しておりませんので、実際の計算はもう少し複雑になります。

簡便法

実際にDCF法を使って、投資と効果の計算が出来たらいいのですが、例えばIT投資の目的が「グループウェアを導入することにより、様々な営業ノウハウを蓄積し、ナレッジマネージメント経営ができる会社に変革する」など定性的な効果、戦略的な効果を主眼においている場合はリターンの計算が難しくなります。

そういう場合は簡便法を使う場合があります。統計的には売上高の1~3%をIT投資にまわす企業が多いことから慣習的に出てきた方法です。

中には10%以上をIT投資している企業もありますので、IT投資の効果をどう考えるかによって大きく数字は変わってきます。一つの目安とお考えください。

簡便法

年間売上高の1%をIT投資費用とします。
(または、粗利益の0.5%でもかまいません)
(例)(年間売上高)10億円×1%=1,000万円

ただし、システムを導入した後にかかるシステムを維持していくランニングコストも考えないといけません。

運用をアウトソーシングするのなら、その委託費用や消耗品費などになります。IT投資額の半分がランニング コストとになるとすると、上記の場合は500万円が初期投資分となります。

投資に見合うリターンが得られるように、しっかり投資計画を立てましょう。 あなたの会社もカヌー型経営を目指してみませんか。
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