情報サービス業は警告93件! |
2004年度上期の下請法の運用状況が公正取引委員会から発表されました。新たに対象となった情報サービス業で既に警告が93件発生しています。「買いたたき」「購入等強制」「不当なやり直し」等の違反行為が目立っています。 |
システム開発で下請法に違反すると、勧告と同時に社名が公表されるようになりました!(既に社名公表の実例が出ています)
システム開発が下請代金支払遅延等防止法(下請法)の対象となりました。従来は製造業の下請事業者を保護するための法律でしたが、改正されシステム開発が新たに対象となっています。
違反した場合、従来は勧告に従わない場合のみ公正取引委員会が社名を公表していましたが、改正され勧告と同時に公表されます。9月28日に改正後初めての勧告があり社名が公表される実例が出ています。
下請法の趣旨は
たとえ下請事業者から了解を得ていても、また親事業者に違法性の意識がなくても、規定に触れるときには下請法違反となる。 |
とありますので、会社としては下請取引に関わる担当者全員に十分な教育が必要です。
従来は製造業が対象でしたので資材部や工場の担当者教育だけでよかったのですが、これからはシステム開発やアウトソーシングに関わる部門の担当者が対象になってきます。
また自社が製造業でなかったため法律の存在自体を知らない事業者が多いのが実態です。システム開発を外部に委託する場合、自社も対象となってきます。つまり全業種の事業者が対象となります。
経営者にとりコンプライアンス経営をしていく上で非常に重要な法律です。担当者に教育していなかったではすまされません。
では「企業のIT導入」ではどう注意すればよいかみていきましょう。
そもそもどんな法律なの?
下請代金支払遅延等防止法は昭和31年に制定された古い法律です。もともとは製造業が対象で、下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護を図ることを目的としています。親企業に比べ弱い立場である下請事業者を守るための法律です。製造業の下請事業者を守る法律 |
→ 法律の条文・ガイドラインについてはこちら(公正取引委員会)
ところが近年、産業構造の変化が起きています。
10年前 | 現在 | |
工場数 | 70万 | 55万 |
商店数 | 170万 | 130万 |
サービス事業者数 | 172万 | 183万 |
経済のサービス化、ソフト化が進み法律の見直しが行われました。平成15年6月に法律改正が行われ、現在施行されています。
システム開発が対象になりました
プログラム作成、つまりシステム開発に関わる取引が新たに対象となりました。他に映画や放送番組の作成、パッケージデザインなども対象となりました。他には検査忌避などの罰金が従来の3万円から50万円に引き上げられました。
一番大きな改正が違反事業者に対する扱いです。従来は勧告して従わない場合に社名を公表していましたが、今回から勧告と同時に公表されるようになり、既に9月28日に最初の適用事例が出ています。これは企業の信用問題にかかわってきます。
社名は新聞などで報道されるほか公正取引委員会のホームページでも公開されます。Googleのキャッシュなどでずっと負の情報として残ってしまい企業のイメージダウンになってしまいます。
資本金が1千万円超なら要注意!
対象となる親事業者ですが資本金1千万円を超えていれば該当します。株式会社の最低資本金が1千万円ですので、それより少し資本金が多ければ親事業者です。この場合、下請事業者は資本金1千万円以下で、有限会社や個人事業主も対象となります。つまり少し規模の大きな株式会社は全て親事業者になってしまいます。
ただし、下請法ではITベンダーが受注した開発案件を別のITベンダーに委託するような場合を想定しています。恒常的に業として「もの作り」をしていることが条件となります。
ITベンダーでない業種で自社が使う自社システムの開発の一部や全部をITベンダーに委託する場合は基本的に下請法の対象外です。ただしITベンダーでなくとも恒常的に業となるようなシステム開発を委託で行う場合は対象となります。
具体的には会社案内の域を出ないホームページをITベンダーに委託したような場合は対象外ですが、物販を行うようなホームページや受注を狙うホームページをITベンダーに委託した場合、委託契約が下請法の対象となります。自社システムを改良してパッケージとして外販するような場合、開発をITベンダーに委託すれば下請法の対象となります。
下請法の対象になるならないはケースバイケースになりますが、どの委託契約も下請法の対象となると考え、注意するにこしたことはありません。
では親事業者は何に注意しないといけないのかみていきましょう。