大学生の就職活動/就職活動の準備

企業が大学生に求める力とは? 3(3ページ目)

みんなは学生だ。企業は学生であることを分かった上で採用するんだ。なのになぜわざわざ課外活動で自己PRする必要があるんだろうか。素直に授業で学んだ「企業が求める力」をPRすることが、正しいはずなんだ。

執筆者:見舘 好隆

「企業が求める力」は、授業で獲得するのが、王道だ。

クラスメイト
一人でコツコツ勉強しても、大切な力は身につかない。大学だからこそ獲得できることを、あらためて大切にしよう。
バブル崩壊後、ずっと新卒採用は控えられていたが、近年、採用数が元に戻りつつある。しかしながら、コミュニケーション機会の縮小、ビジネス環境の変化、社内教育投資の縮小、第二新卒の増加(早期離職者の増加)、派遣社員など非正社員の増加など、高度成長時代における終身雇用及び年功序列に基づいた大雑把に採用し社内育成していく旧来の新卒採用スタイルは終わった。つまり、景気が戻りいかに採用数が増えようとも、厳選採用、つまり「企業が求める力」を定義し、その力を持つ者しか採用しないことには何ら変わりは無い。

よって、従来の「サークルの部長をやってました」「アルバイトで売上トップになりました」「ヒッチハイクでアメリカ横断しました」「イギリス留学しました」といった、課外活動の成果だけでは、もう、企業の人事には響かない。なぜならば、サークルの部長をやってたら必ずしも「リーダーシップ」が身につくわけではないし、アルバイトでトップになったからといって必ずしも「コミュニケーション力」があるとは限らないし、アメリカ横断したからといって必ずしも「ストレス耐性」があるわけはないし、留学したからといって「交渉力」があるとは必ずしも限らないからだ。

人事はそんなトピックスでは食い付かない。もっと長いスパンで、ずっと打ち込んできたことを評価する。なぜならば、「企業が求める力」は、短期間では身につかないからだ。

「アルバイトは3年間続けたんですよ!」
「サークルは3年間続けんですよ!」


と思うだろう。でも、アルバイトもサークルも、「企業が求める力」を身につける養成機関では決して無い。君の意欲と環境に左右される。よって、その「経験」だけでは、企業は素直に話を聞けないのだ。

しかし、授業ならどうだろう。授業は少なくとも半年以上出席し続けるし、何よりも評価するのは教員だ。もし最高の評価を取ったなら、それは第三者が君を認めたことになる。他の学生と比べて君の評価は高いという、客観的な「事実」なのだ。さて、例えばアルバイトならどうだろう。もし「アルバイトでコミュニケーション能力を身につけた」とPRしても、自分で勝手にそう思い込んでいるだけかもしれない。店長や同僚、そしてお客様が口を揃えて「君のコミュニケーション能力は素晴らしい」と褒め称えてこそ、その「コミュニケーション能力」は「事実」に近づくかもしれないが、授業の評価よりは客観性に欠けると言わざるを得ない。

授業における最高評価は、まず無遅刻無欠席であり、課題はすべて提出、そして授業中における発言や発表など、すべてをクリアしなければ取れない。リクルートが策定した「基礎力」において言えば、
  • 行動持続力…率先して行動し、それを習慣づける。
  • 自信創出力…いわゆるポジティブシンキング。モチベーションを持ち続ける。
  • 課題発見力…課題に気づき、整理する。
  • 言語的処理力…文章の要旨を把握し、その目的を理解する。
  • 論理的思考力…すでに集めた情報を組み合わせ、分析し、構造的に理解する。
は自ずと培われるだろう。また、グループディスカッションやフィールドワークなど、グループ単位で遂行する課題がある授業であれば、
  • 親和力…一緒に働く仲間と信頼関係を築く。
  • 協働力…目標に向けてチームワークを発揮し仕事を進める。
  • 統率力…いわゆるリーダーシップ。組織全体を把握する。
  • 感情制御力…感情に流されない。
  • 計画立案力…課題を解決するための計画を立案する。
も自ずと培われていくだろう。また、オリジナリティを競うタイプの課題発表があるなら、
  • 創造的思考力…全くのゼロから思考する。オリジナリティな発想をする。
アンケート分析するなら、
  • 数量的処理力…計算する、グラフ・表を読み取る。
  • 実践力…立案した計画を実行する。
がきっと身につくだろう。それも指導教官がいるわけなので、身につけたことの説得力は、サークルやアルバイトより格段高いはずだ。



みんなは学生だ(私もつい先日まで)。企業は学生であることを分かった上で採用するんだ。なのに、なぜわざわざ課外活動で自己PRする必要があるんだろうか。素直に授業で学んだことをPRすればいい。それは知識だけでなく、その学習プロセスにおいて身につけた力、まさに「企業が求める力」をPRすることが、正しいはずだ。

「授業で身につけた力なんて、思いつかないよ!」

そんなことないよ。一つぐらいSやA(または優)がついた授業があるだろう。その授業で君は「何か」を教員に認められたんだ。そしてその「何か」を発揮する努力を「何か」したはずだ。それを、上記の「基礎力」から引っ張り出してみよう。立派な自己PRになるはずだ。そもそも、学内には数え切れないほどのたくさんの授業があるはずだ。その授業の中から、真剣に面白い授業を探したことはある人は、結構少ないんじゃないかな(単位が取りやすい授業は探したかもしれないけど)。

これからの大学が、在学生のキャリア形成支援のために採るべき道の一つは、履修する学生にその授業内容を詳しく明示することと、その授業で身につけることができる「力」の明示をすること、そして卒業生の「品質保証」をすることなのかもしれない。


「07年春主要100社採用計画調査」をみると、企業は「成績」を重視していない。これは「成績」と「企業が求める力」とがリンクしていないことを意味する。本当にそうだろうか? 企業は大学で教えられている授業の内容と、成績と、入社後活躍する人材とに相関関係が無いかどうか、もう一度確かめるべきだ。概して、成績優秀な学生は、就職活動もうまくいっているはずなのだから。

※とは言っても、全くアルバイトやサークルの経験が役立たないというわけではない。あくまでもそのプロセスで得た力をPRしなくてはいけないことを忘れてはならない。

※記事「授業を通して企業が求める力を得る!その1」
「授業を通して企業が求める力を得る!その2」はこちら!




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