公庫や年金は任意ですが、ほとんどの民間融資においては住宅ローンを組もうとすると団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられています。団信とは住宅ローン主契約者が死亡または高度障害となり、返済に支障を来たすこととなった場合におりる生命保険で、一般的な家庭ではご主人が保険契約者かつ被保険者で、奥様(とご子息)が保険金受取人となります。任意とされる公庫でも実質的には公庫利用者の95%以上が加入している現状において、無視できない制度であることは間違いありません。
一家の大黒柱(ご主人)に万が一のことがあった場合に契約保険会社から保険金がおりることで住宅ローン(残債)が相殺され、遺族は住むところを失うことから開放される仕組みです。
■民間保険とのリバランスにトライしよう
今回のテーマであります「リ・バランス」とはそもそも金融用語で、ポートフォリオ理論に出てくる考え方です。相場の変動などで変化した投資配分の比率を調整するのが本来の意味ですが、ここでは民間生保と団信の保険料および保険金を斟酌(しんしゃく)して、余分な保険料を削減しよう、という発想です。
9割以上の家庭が何らかの保険に加入しているほど、日本人は保険が大好きです。「何かあったら」「断れなくて」「ついつい付き合いで」と、契約書に押印してしまう現状において必要保障額以上に加入していることが往々にしてあるのです。もっと分かりやすくいえば保険のかけ過ぎなのです。マンション生活では管理費や修繕積立金、マイカー族では駐車場使用料などが毎月かかり、さらに固定資産税(および都市計画税)など、様々なランニングコストが必要になります。団信は「年払い」ですので支払いこそ年に1回ですが、決して安い金額ではありません。
民間生保だけで住宅ローンの残債も補えるようであれば、団信は解約しても何ら問題はないはずです。逆に団信は継続し、民間生保を縮小させる方法もひとつです。これが「保険のリ・バランス」です。
ご主人に万が一のことが起こった場合に遺族に必要とされる費用は
・ご家族の日常生活費 ・教育費(ご子息がいる場合) ・奥様の老後資金 |
たとえば、団信以外にご主人が保険金7000万円の定期付き終身保険に加入し、奥様およびご子息で医療保険に別途加入しているとします。住宅ローンを3000万円借りていると仮定すると、ご主人の生命保険金額は1億円(7000万円+団信3000万円※)となります。遺族必要費が多いことは将来不安を緩和させる要因となりえますが、その分、毎月の掛け金(保険料)も比例して増えることになります。
※団信は「住宅ローン残高」を上限として保険金が支払われます。当初の借入額ではありません。
■遺族年金も支給される
「保険金1億円」が多いか少ないかは人それぞれですが、重要なのは
1) 民間生保と団信を含め、ご家庭の生命保険内容を正確に把握する 2) 上記保険が「必要かつ十分」な金額で、無駄がないかどうか 3) 一定条件を満たせば遺族年金ももらえる |
「残された遺族に18歳(障害者は20歳)未満の子供がいる妻」
「18歳(障害者は20歳)未満の子」
に対して遺族基礎年金が支給されます。さらにご主人がサラリーマン(第二号被保険者)であれば、基礎年金に追加して遺族厚生年金も受け取ることができます。「18歳(障害者は20歳)未満の子供がいる妻」には妻本人に毎年およそ80万円もの遺族基礎年金が支給されますので、その分、民間保険の保険金をあらかじめ削ることも可能となるのです。
「知っているか?知らないか?」が分かれ目となるのかも知れません。
最後に、民間の生命保険では1年間に実際に支払った保険料は毎年、生命保険料控除の対象(ただし最大で所得税5万円、住民税3万5000円まで)となりますが、公庫の場合は対象外となっています。また、「繰上げ返済」を行い住宅ローン残高が減少した場合、すでに支払ってしまった保険料は戻りません。細かいことですが、ちょっとした工夫の積み重ねが「賢いマンション暮らし」には欠かせないのです。
♪♪「よ~く考えよぉ ♪お金は大事だよ~」
実に“確信”をついたキャッチコピーです。少しでも無駄な支出をなくすためにも、まずは「保険のリバランス」にトライしてみてください。
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