不良債権処理は一服感あり
不良債権処理に一定のメドはつきそうだが・・・ |
先行きを不透明にしている懸念材料のひとつが2006年3月期から導入が予定されている減損会計で、同会計が適用されると企業は自社が保有する事業用の土地や建物などの固定資産の価値が簿価価格を大幅に下回った場合には、損失を計上しなければなりません。現在の会計基準では、不動産などの固定資産を購入した場合、取得時点の「簿価」で帳簿に記載されるため、仮に実質価格(時価)が大きく下落しても会計上は過大評価のままとなっています。こうした仕組みが不良債権の顕在化を先送りさせる原因ですので、減損会計を導入し、早め早めに評価損を処理していくことは大事なことですが、単純に歓迎できないマイナス面もあります。
土地放出が加速される
ひとつは財務内容が健全な企業であれば問題ありませんが、体力のない企業では巨額の損失をいっきに計上することでバランスシートが悪化し、最悪は債務超過に陥る恐れがあることです。取引金融機関からみれば、新たな不良債権の登場を意味します。
そして、もうひとつが保有資産の投げ売りです。減損会計のリスクにさらされ、多額の引き当て金を積んでまで企業は資産を保有している必要が薄れることで、土地や建物の放出がはじまるのです。駅に近くて環境にも恵まれ、マンション用地として最適な案件であればデベロッパーや分譲業者がとびつきますが、立地条件が揃っている土地を急いで投げ売りするとは考えにくく、優先順位としては「価値の低い」用地が対象となるはずです。モノの値段は「需要と供給のバランス」で決まりますので、供給過剰となれば地価は下がるのが必然の流れです。
中古マンションは下がり続けるのか?
減損会計が地価の上昇を阻害する要因となりえることはご理解いただけると思いますが、現実問題として中古マンション価格はどの程度下がっているのか気になるところです。
下の表は東日本不動産流通機構が発表している「東京都全域における築年数別平均価格(2004年6月~8月)」で、築年数別に平均価格をまとめてみると、築15年を堺に価格の下落幅が急激に縮小していることが分かります。
東京都全域における築年数別平均価格(2004年6月~8月) (単位:万円)
1K~2LDK | 3K~3LDK | ||
~築5年 | 平均価格 | 3584 | 3863 |
平均平米単価 | 63.22 | 51.48 | |
~築10年 | 平均価格 | 2822 | 3050 |
平均平米単価 | 51.26 | 44.45 | |
~築15年 | 平均価格 | 1941 | 2441 |
平均平米単価 | 38.88 | 34.43 | |
~築20年 | 平均価格 | 1933 | 2339 |
平均平米単価 | 37.73 | 33.68 | |
築21年~ | 平均価格 | 1734 | 1945 |
平均平米単価 | 35.87 | 30.30 | |
平 均 | 平均価格 | 2295 | 2650 |
平均平米単価 | 51.47 | 68.39 |
例えば、3LDKの中古マンション(築5年)を購入し10年後に売却(築15年)したとすれば、1422万円の譲渡損(3863万円-2441万円)が発生することになり、3000万円を金利4.0%の35年返済でローンを組んでいたとすると、10年間返済しても元本は約490万円しか減っていないので、ローン残高は2510万円(3000万円-490万円)です。かろうじて債務超過(住宅ローンが売却額で相殺できない)は免れた格好ですが、およそ1400万円が消えてしまいました。
同様に所有期間は同じく10年間としても、築15年の3LDKを購入し、築25年で売却したとすると譲渡損は496万円(2441万円-1945万円)で済むことになります。
こうしたシミュレーションはあくまでひとつの試算例にしか過ぎませんので、ご自身のマンションにそのまま当てはめることは危険ですが、「利用価値」としての有用性は優れていても、「資産価値」として所有している(=賃貸ではない)ことの大義名分(理由づけ)は見付けにくいのが事実です。