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堀田聰子さん・ぜひ介護職同士で語り合って(3ページ目)

シリーズ記事「介護サービスの質の向上」第2弾は堀田聰子さんに経営者、中間管理者、介護職一人ひとり、行政、それぞれの立場で取り組んでいくべき課題について伺った、後編です。

執筆者:宮下 公美子

専門性の自主的なレベルアップは専門職の条件

サービスの質というと、今回の介護報酬改定で質を計る指標とされた資格の問題もあります。介護福祉士の資格を持っていれば、ヘルパー2級ではできない質の高いサービスが提供できる、とは言い切れないことは、みなさんもよくご存じのこと。また、資格手当も事業者によって付いたりつかなかったりする現状では、資格取得の意欲が高まりにくいようにも思います。この点について、堀田さんは「お金で報われなければ資格を取らないというのはおかしい」ときっぱり。

「自分自身のスキルアップのために、たとえば財務や経理の人が、会計関係の資格を取ったとき、どれだけ資格手当が付いているのか。英語を使う仕事だから英検を受けたといって資格手当は付いているのか。付かなくても、自分自身の仕事に役立つから、あるいは自分自身をレベルアップしたいから、取るわけですよね。自分の専門性や自分の価値を高めていくのは、専門職であれば当然のこと。そういう意識を持っていてほしいと思うんです」

堀田さんは一方で、資格を取得したり研修を受講したりしたらそれを力として発揮し、サービスの質を高めていける職場を作ることが必要だとも言います。そこができていないから、資格手当を出しにくいのだ、とも。

「資格取得を奨励するのであれば、資格を取ったこと、あるいは研修を受けたことによって、体系化された知識を生かせる職場を作っていくことがセットでなくてはいけません。たぶんいくつかステップが飛んでいるんだと思うんですよ。だから資格を取った人が多い事業所が介護報酬で評価されることに違和感がある。

質の評価軸を作り、それにつながる資格体系を整えていく。この部分は行政の役割です。行政としては、有資格者を増やすことが目的ではなく、利用者に満足してもらえるサービスを提供することが目的であり、責任であるわけですからね」

また、キャリアアップの道筋は資格取得だけではないことも、堀田さんは指摘します。

「資格や研修も大事ですが、様々な職場を経験することで積んでいけるキャリアもあります。一つの法人で複数のサービスを提供していれば、いろいろな職場を異動していくことで学び、身に付けていけるものはいろいろあると思うんです。そうした資格だけではないキャリアのあり方についても、事業者は考えていかなくてはいけないと思います」

前編でも堀田さんが触れていますが、職員が多くの職場を経験し、キャリアアップできる事業の構成を考えることも経営者の役割の一つと言えるということ。同時に、キャリアアップした職員を的確に評価できることも必要になってきます。結局のところ、やはり質をきちんとできる評価の指標を作っていくことが、優先課題ということでしょうか。

最後に、私自身も含め、多くの介護職が感じている厚生労働省の施策への不満、どこにどう伝えていったら、施策が変わっていくのだろうかと考えた時に感じる無力感について話したところ、堀田さんはこのように答えてくれました。

「言っても届かないと思うと無力感を感じますが、やはり一人ひとりが言葉を発していくことが始まりです。自分が発することで現場が変わり、現場が変わったことで、行政が理解するということもあると思うんですよ。一人で、ただ、考えているだけでは何も変わりません。どうかあきらめずに、言葉を発していってください」

「一人で考えているだけでは何も変わらない」、だから「言葉を発していくこと」。質をはかる指標作りにしても、現場のみなさんが本当に必要だと考えるなら、行政任せにしていてはいけないのかもしれません。現場からもこんな指標があり得ると声を上げる。あるいは実践して見せていく。それで行政を動かしていくことを考える必要がありそうです。

私も、これからさまざまな現場の営み、思いを紹介していきたいと思います。そしてみなさんにも、ぜひいろいろな場で、自分の思い、取り組みについて語っていただきたいと思います。

※他業界からの転職者の受け入れの問題、心のケアと介護技術のバランスの問題など、堀田さんのお話はまだまだつきません。また番外編としていずれご紹介したいと思います。
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