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潜在介護福祉士等に復帰してもらうために(3ページ目)

2008年末に発表された「介護福祉士等現況把握調査結果」。離職者の介護業界への復帰希望は5割程度。彼らに今後、介護の職場に戻ってもらうために必要なことは何でしょうか。

執筆者:宮下 公美子

責任の重さ、経験年数に見合う待遇を!

この調査では、現職者に対して「仕事を行う上での不満や悩み」や「現在の仕事を続けていく上で改善して欲しいこと」を問うています。また、過去、福祉・介護分野での就労経験があり、現在、他分野で就労している有資格者には「福祉・介護分野の仕事を辞めた理由」や「福祉・介護分野への復帰意向」、「復帰する上で改善して欲しいこと」を尋ねています。


回答を見ると、現職者は「給与や諸手当が低い」「昇進等将来の見通しが立たない」「社会的評価が低い」ことに不満を感じ、にもかかわらず、「業務の負担や責任が重すぎる」ことに悩んでいます。これでは、仕事に対して高い意欲を持ち続けるのはなかなか容易ではありません。いつ息切れしてもおかしくない状況に思えます。

他業界での就労者が福祉・介護分野の仕事を辞めた理由も、最も多いのは「給与等の労働条件が悪いため」。福祉・介護分野への復帰意向は「ぜひ戻りたい」「条件が合えば戻りたい」を合わせると、社会福祉士、介護福祉士とも約5割に上ります。一方、「戻りたくない」は2割弱。一度離職しても、福祉や介護の仕事にいまも魅力を感じているかたは多いのです。それだけに、待遇が悪くて続けられないかたがいる今の状況は、本当に残念です。

これらのかたたちが復帰する上で改善して欲しいこととしてあげているのは、やはり「資格に見合った給与水準に引き上げる」(社会福祉士66.2%・介護福祉士65.3%)ことであり、「経験に見合った給与体系の構築」(社会福祉士29.6%・介護福祉士30.9%)であり、「社会的な評価を向上させる」(社会福祉士34.5%・介護福祉士25.2%)ことです。

定着率、職場復帰率を上げるには、責任の重い仕事に見合うだけの正しい評価――それは給与面だけでなく、社会的地位という面での評価も含めて――が絶対に必要です。同時に、将来にわたって働き続けたいと思えるキャリアパスを整えていく必要もあると思います。

雇用機会均等法が施行され、女性の活躍の場が広がったころ、キャリア志向の女性から「ロールモデルがいないから将来像を思い描きにくい」という話をよく聞きました。5年後、10年後の自分を思い描くためには、その手本=ロールモデルとなる先輩、上司がいることが望ましいと思います。目標となる人がいれば、その人のようになるために自分がどのような能力、技術を身につける必要があるかを考えやすいからです。

みなさんの職場に、ロールモデルとなるかたはいるでしょうか。
現職のかたと話すと、先が見えない、という話をよく聞きます。今の仕事には満足しているが、10年後もこの仕事を続けていていいのかと考えると不安になる、と。給与は上がりそうにない、続けていっても10年後、どのような立場になっているのか想像しにくいというのです。将来に夢の持てない職場では、仕事を続けていくのが苦しくなります。

福祉・介護の分野での離職率が高いのは、現状の待遇の低さとともに、こうした、先に希望が持てない状況も大きく影響しているのではないでしょうか。たとえば、介護職のステップアップ職として位置づけられてもいいはずのケアマネジャー。低い介護報酬からくる低待遇と重責のために、介護職の目指したい資格となっていません。こうした現状を変えていくことはできないだろうかと思います。

ステップアップを志す介護職の目指す資格が「看護師」と言われてしまう現状は、変えていかなくてはなりません。

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