無資格者中心でも重篤な事故はゼロ
アライアンスの登録サポーターは、2006年4月現在約300人。そのうちヘルパー2級修了者が約100人、ヘルパー1級修了者と介護福祉士有資格者が約10人。全体の2/3近い、約190人が無資格者です。当初イメージしていた居室での話し相手だけなら、無資格者でもできるかもしれません。しかし、外出に同行し、トイレ介助や食事介助などの身体介護も行うとなると、無資格者で対応できるのか。サポーターに対しても、当初は「身体介護なし」と謳っていただけに、混乱はないのか疑問でした。
サポーターの湯山信代さん(右)と吉原悦衣(よしえ)さん |
(株)アライアンス常務執行役員の佐倉順一郎さんも、これについて「確かに最初の頃は、イベントに同行したホームのスタッフから『サポーターは、身体介護はできません、とただ立っているだけで車いすを押してもくれない。なんのために来たのか』とお叱りを受けるなど、行き違いもありました」と語ります。サービスを受ける側の(株)ライフコミューン広報部マネジャー掛川幸子さんも「どこまでサポーターさんに任せていいか、判断に迷うことも多かった」と、当初を振り返ります。
アライアンスは、そこで、サポートサービス時に起きたさまざまなトラブルを、サポーターから報告書の形で吸い上げて分析。これを元に、サポーター向けに毎月1回、実践的な研修を実施することに。トイレ介助がスムーズに行われていないようであれば、トイレ介助の実技研修。買い物同行でトラブルがあれば、トラブル回避の方法をグループディスカッションでサポーター自身に考えさせ、発表させて、最後に理想的な対処法を教示しました。
サポーターの湯山さんと吉原さんは、今は月2回、決まった入居者に対して付き添いケアサポートサービスを行うほか、月2~5回ほどイベントサポートサービスも行っています。「この1年、イベントや研修に何度も参加しているうちに、サポーター同士顔見知りになり、連携がとりやすくなった」と言います。この事業を統括する石川さんが「外出イベントの回を追うごとに、サポーターさんの仕事ぶりが目に見えてレベルアップしてきたのを感じた」と語るように、実務に即した研修もさることながら、この事業はサポーター自身の前向きな姿勢に支えられている部分も多いようです。
(株)アライアンス常務執行役員佐倉順一郎さん |
拘束される「仕事」はしたくないが、人の役に立つことなら積極的にやってみたい。このサポーター事業は、そんなボランティアへの意欲が高い層にマッチしたのだと感じました。また同時に、ヘルパー2級修了の意味にますます疑問を感じたりも。よく言われていることではありますが、ただ講座を修了しただけの未経験者より、現場で経験を重ねた無資格者の方が、実戦で活躍できると実感しました。
介護保険では制度上ヘルパー3級修了以上が求められます。しかし少なくとも軽介護者への対応であれば、資格にこだわらず、人の役に立ちたいという意欲のある人に担ってもらえれば十分なのかもしれません。
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