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介護保険外サービスの可能性~アライアンス(3ページ目)

介護保険外で老人ホーム入居者に、話し相手や外出介助などサポーターサービスを提供している(株)アライアンス。サービス開始から1年たった現状を取材し、この事業と介護保険外サービスの可能性を考えました。

執筆者:宮下 公美子


年齢・資格不問の理由

ところで、そもそもなぜ募集要件は「年齢・資格不問」なのか。

これについて佐倉さんは、「間口を広くして多くのかたを受け入れたい。資格や年齢、勤務日数での制約をつけて雇用契約を結ぶのではなく、ご本人が自由意志で仕事を受けられる『業務委託契約』の方が、実際にサービスを行うサポーターの方々の立場からも受け入れてもらいやすいのではないか」と言います。

なぜ「間口を広く」にこだわるかと言えば、この事業のねらいが、「シニア(=入居者)の行動支援」であると共に、「シニア(=サポーター)の社会参画」だから。シニアが自由意志で仕事を受託し、活躍できる場を提供したい、というのは、前社長も話していた事業開始当初からの明確な意図。まもなく定年を迎える団塊世代に目を据え、経済的にややゆとりがあり、定年後は人の役に立つことをしたいと考えている人たちを、サポーターとして取り込んでいきたいというわけです。そういういう点では、今の事業はまさにサポーターにぴったりの層を取り込むことができているように思えます。

一方、「シニアへの行動支援」という点ではどうなのか。
サポートサービス利用者には、「表情が豊かになった」「離床することが多くなった」「サポーターと一緒に買い物の外出をするようになった」など、行動の好転が数多く見られている様子。

外出イベントへの参加者は、毎回、延べ人数でライフコミューンのホーム入居者の2割強。居室を訪れて1対1で話し相手などをする付き添いケアサポートサービスの契約件数は、2006年5月現在、全ホームトータルで70件を超えるまでに拡大しています。この件数自体は、入居者総数が約1800人強と考えると少ない気もしますが、佐倉さんは「このサービスに対する潜在的ニーズを顕在化することができたという点で、現在の70件を超える契約数というのは予想以上の成果。これからは、より多くのニーズに応えるためのサービスメニューの改良と、より多くの方々にこのサービスを利用していただくためのさまざまなアプローチを本格的に行っていきたい」と言います。

掛川さん
(株)ライフコミューン広報部マネジャー掛川幸子さん
ライフコミューンの掛川さんも、「外出イベントが定期的に組めるようになり、入居者様もご家族もとても喜んでくださっています。当社が目指す『QOLの向上』にとって、サポーターさんは今や欠かせない存在」と言います。

1対1の付き添いケアサポートサービスについても、「サポーターさんの多くは50歳代、60歳代のかた。ホームの若いスタッフにはやや力不足が否めない、高齢者に対するコミュニケーション能力やマナーの部分で、入居者様にもご家族にもたいへん高い評価をいただいています」と掛川さん。2年目を迎えたばかりの事業としては、上々というところでしょうか。

現段階では収益を上げるには至っていないものの、佐倉さんは「話し相手などの心のケアも外出時の付き添いサポートも、ニーズは十分あるという感触をこの1年で得ました」と言います。今後の目標は、サポーターの登録数をさらに増やすこと。そして、たとえば旅行の同行サポートなど、サポーターのスキルとサービスのレベルアップを進めること。

「近い将来、ライフコミューンだけでなく、他の有料老人ホームや在宅の高齢者へもサービスを提供していきたいですね。数年計画にはなりますが、今後はサービス利用者の要望や、提供するサービスメニューの質的な違いに応じた柔軟な料金体系の設定などを通じて、収益事業化していきたい」と佐倉さんは言います。

確かに、アライアンスのサポーター事業のような介護保険外サービスは、対象をもっと広げてもかなりニーズがありそうです。経済的にゆとりがある層が利用者の中心にはなってしまいますが、こうしたサービスがほしいと待ち望んでいる高齢者、家族も多いと思います。

しかし、類似事業を展開している他社のサービス料はアライアンスの2倍近く。収益事業化していくにはサービス料のアップは避けられないのではないか。そのとき、いかにレベルの高いサポーターが揃っていたとしても、果たして無資格のサポーターが提供するサービスに高いサービス料を払ってもらえるのか。そんな疑問を感じました。

この疑問に対して佐倉さんは、「現時点では、すぐにサービス料金を引き上げる必要性は感じていません。当社が展開している他の事業とこのサポートサービス事業とを組み合わせることで、より多くの収益をもたらす仕組みを構築していきます」とのこと。

1年後、アライアンスのサポーター事業がどのような姿になっているか、楽しみにしたいと思います。
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