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介護保険認定調査員って知ってますか?(2ページ目)

ガイド宮下、2007年度1年間、行政の非常勤職員介護保険認定調査員の仕事をしました。認定調査員の仕事について、その養成のあり方など、感想を交えて紹介します。

執筆者:宮下 公美子


入職3週目には1人で調査に

ケアマネジャーやヘルパーの経験があっても、やはり認定項目に関する細かい判断基準は、教えてもらわなくてはわかりません。自治体によっては、本採用となる4月を前に、3月から研修期間として雇用されるところもあるようです。しかし私の場合、まず4月入職の1ヵ月前に、調査項目の判断基準について書かれたマニュアルを、入職までに目を通しておくようにと渡されました。

入職後は、1日、新人調査員向けに調査項目や調査方法についての座学の研修があったものの、あとは実践研修。まず1週間、1日2件程度、先輩調査員の調査に同行します。

先輩からは多くのことを教えてもらいました。
訪問前には確認の電話をかけるのですが、そのときの応対で認知を伺わせるものはないか、声の大きさはどの程度かなどに気をつけること。家を訪れたときには、家の中の状況(段差の有無、広さ、掃除の状況、整理整頓の状況等々)、家族とのやりとりの様子、迎えに出てきてくれたなら歩行の状況などをきちんと見ておくこと。そのほか、お茶を飲む、字を書く、ものを持ち上げるといった調査中の動作、話し方等々、ありとあらゆることに目をこらし、耳を澄ませることが必要だと教わりました。

具体的な調査については、聞き取りのやり方を見て、聞いて学び、自分自身も各項目についてどのレベルに当たるのかを判断。特記事項(※)も書いてみます。そうしてまとめた調査票を、同行した先輩とすりあわせ、判断が間違っているところ、特記の書き足りないところ、不要なところ、表現が不適切なところなどを指摘してもらうわけです。

次の1週間は先輩にフォローしてもらいながら自分自身で聞き取り調査。私が聞き取り切れていないところは、先輩がフォローしてその場で聞き足してくれます。役所に戻り、調査票をまとめたら、先輩が書いた調査票とすりあわせ。判断の誤り、書き足りないところなどについて指導を受けます。そして、その次の週、つまり入職3週目からは、1人で調査に行く、という駆け足の養成でした。

実践研修の2週間なんて、本当にあっという間。えっ、もう、1人で調査に行くの!? という感じでした。私はライターですから、取材(聞き取り)も、聞いたことを文章にまとめるのも慣れているつもりです(っていうか、一応、本職)。しかし、状態像把握のために必要な聞き取りは取材とはまったく違いますし、行政文書の書き方も、雑誌などの記事を書くのとはまるで違います。相当とまどい、悩みました。

現場経験のない悲しさで、何を聞き取れば状態像が把握できるのか、また、片麻痺などの状態から、できること、できないことをすぐに思い浮かべることがほとんどできません。だから最初は、的を射た質問もできませんでしたし、かなり聞き漏らしも多かったと思います。また、本人や家族が「できる」と言った=「できる」、というように、聞き取ったことをそのまま調査票にまとめていたような気がします。本人が「できる」といっても、状態像から明らかに介助が必要なら、調査員が勘案すべき場合もあるのですが、そこまで頭が回らない状態でした。

ですから、聞き取って帰っても、判断に迷う項目だらけで、先輩や項目の判断基準を指導する保健師さんに状態像を伝えて、どのレベルと判断すればいいかをよく聞いていました。不十分な状態把握と各項目の判断、特記事項であっても、それが認定審査の材料になってしまいます。精一杯やっていたつもりではありますが、実に申し訳ない思いです。

ケアマネジャーや保健師、看護師経験のある方は、記録にも、アセスメントにも慣れていると思います。一方、ヘルパーや施設の介護職をしてきた方は、高齢者の状態像について、実感値としての知識があるでしょう。しかし、それでも、1日の座学と2週間の実践研修だけで82項目の調査をこなし、それを調査票にまとめるのに慣れるのは、やはりたいへんではないかと思います。

※特記事項 歩行、入浴、着替え等、82項目の調査は、【自立】【見守り】【一部介助】【全介助】等、各3~4程度の選択肢から1つを選んでマークシートにチェックします。マークシートでは伝えきれない介護の手間、対象者の個別性等について、補足する必要があると思われる項目は、A4サイズの特記事項欄に1行程度ずつまとめて記します。

>>次のページは【疑問を感じる調査員の養成】
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