専門職として信用されていない悔しさ
ケアマネジャーの標準担当件数にしても、サービス担当者会議の開催時期にしても、内容は問われず、事務的に規定されています。妥当な件数、妥当な開催時期が、ケアマネジャーの判断に委ねられていないことについて、2人は専門職として信用されていないという悔しい思いがある、と話していました。そう感じるのはもっともだと思います。適正なケアマネジメントを推進したいという厚生労働省の意図はわかります。しかし、人は細かく行動を規制されると、自分で考えなくなります。規制にただ従っている方がラクだからです。そして、規制に縛られてやりたいことができないでいると、次第にモチベーションが下がり、考える努力をしなくなっていくからです。
そう考えると、こうした細かな規定はケアマネジャーの自由裁量の余地を少なくし、結果、自分で考えないケアマネジャーを増やしていくことにならないのか。そして、自分で考えないケアマネジャーがふえていけば、さらに規定を細かくしなければ制度が運営できなくなるのではないか。そんな懸念があります。
5年以上、介護や福祉、医療の現場経験がある専門職が試験を受験し、合格後さらに研修を受け、5年ごとの更新にも研修受講が義務づけられることになったケアマネジャー。介護保険制度の要だからこそ、手厚い育成体制をとっているわけです。
しかし実態としては、業務上、自分なりの裁量をふるい、創意工夫を凝らす場面がどれほどあるのでしょうか。改正のたびに、作成しなければならない書類が増え続け、本来業務であるケアマネジメントに割ける時間がどんどん削られている、という声もよく聞きます。
また実際の業務場面でも、ケアマネジャーには多くの相談、要請が降りかかってきます。以前、社会福祉士会の研修に参加したとき、現職ケアマネジャーが、「利用者に関わる困ったことがあると、在宅の事業者は何でもケアマネジャーに何とかしてくれ、と言ってくる。まず自分たちで解決の方法を検討した上で相談してきてほしい。ケアマネジャーは何でも屋ではない」と話していました。それを聞いたデイサービスの相談員が、「たしかに、安易にケアマネジャーに相談していたかもしれない。反省したい」と応じていました。
在宅の事業所で働いているかた。
何でもケアマネジャーに解決してもらおうと考えてはいませんか?
介護保険制度の要であるはずのケアマネジャー。制度的には業務をさまざまに規制され、また、利用者からも事業者からも職責以上に頼られがちです。要としての働きが十分にできる体制にはないと感じました。
制度面で言うと、今回、現職ケアマネジャーのお二人の話を聞いていた介護問題に詳しい民主党議員が、このようなことを話していました。
「残念ながら、ケアマネジャーのみなさんにはまだ政治力がない。だから、2006年度改正はケアマネジャーの業務に一番打撃が大きい内容だったのに、現場のケアマネジャーにはほとんど意見を聞かずに改正されてしまった。これからは、もっともっと大きな声で問題点を訴えてほしい」、と。
お二人がこの会合で配った、調査結果をまとめた資料には、ケアマネジャーの「現場の声」の抜粋に加えて、「行政への提言」や「現場の私達にできること」が、項目ごとにまとめられていました。制度への不満をただ散発的に訴えるのではなく、忙しい業務の合間を縫って、調査を実施し、それをまとめ、こうして政治家に訴える活動をしているケアマネジャーのみなさんに頭が下がる思いがしました。
介護保険制度を持続可能なよりよい制度にしていくためには、介護業界に関わる私達一人一人が、現場の声を、政策を作る側にきちんと伝えていく努力をしなくてはなりません。そして、専門職としての信頼の獲得、地位向上を図っていくには、こうした努力を地道に続けることが大切だと思います。横浜市介護支援専門員連絡協議会のみなさんの活動を見習っていきたいものです。
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