【介護職の医療行為問題の解決法は?】
ここで、介護職の医療行為に関する問題点を整理してみます。
1●医療行為は医師法により、医師の医学的判断と技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼす恐れがあるので、医師以外が行うことは禁じられている。
2●介護職は医療行為についての知識、技術を体系的に学んでいない。
3●訪問介護の利用者や施設の入所者(以下、利用者と表記)の中には、日常的に医療行為が必要な人が少なくない。
4●利用者が日常的に必要としている医療行為の中には、介護職と同じく体系的に医療行為について学んでいない家族が、医師に代わって行っているケースも多い。
5●日常的に必要な医療行為を家族がすべてカバーするには、精神的、時間的負担がかなり大きい。
6●医師、あるいは医師の指示を受けて医療行為を行う看護師に、家族の代わりに日常的に医療行為を処置してもらうには、費用がかかりすぎる。
7●施設においては、看護師の数が少なく、入所者すべての医療行為をカバーしきれない。
8●利用者、家族から見ると、医師でない家族ができる医療行為を介護職がしてはならないことが納得できない。
9●どこからが医療行為であるか、体系的に明文化された規定がない。
このような問題点が挙げられると思いますが、私は、この中でポイントは2つあると思いました。
ひとつは9について。現在は医療行為と見なされている「つめきり」や「点眼」「外用薬の塗布」などを、一切合切、医療行為と見なして介護職に禁じていることから生じる、現実とのかい離。加療が必要な爪を切るのと、ごく健康な爪を切るのを一緒にしていることがおかしいのではないかということです。
本にも、ヘルペスの持病がある障害者が、手が届かない部分に外用薬を塗ってほしいとヘルパーに頼んでも、塗ってもらえず困ったという話が載っていました。外用薬をヘルパーが塗ることによる危険性があるかどうか、あるとしたら何に気をつけて塗ればよいかという医師からの指示書があれば、ヘルパーにも塗れるようにする、ということでこうした問題は解決できないのでしょうか。
もうひとつは4について。家族が行える医療行為は、介護職にも容認されてもいいものもあるのではないかということ。医師、あるいは看護師からの必要充分な指導、体系だった教育、そして、不慮の事態が生じたときの責任の所在について家族や利用者との明文化された契約があれば、看護・医療がカバーしきれない医療行為を、一部、介護職がカバーすることがあってもいいのではないかと考えました。
その際、本の中にも出てきましたが、医療介護福祉士なり、教育によって一定水準の医療知識、技術を得ていることを明示できる、職名をつけるといいのかもしれません。
そしていずれにしても大切なのは、「介護職の医療行為」について、介護職(あるいは介護職の職能団体)が中心となって解決を図るよう動いていくことです。利用者の要望、医療・看護関係者・関係団体の声を聞くことはあっても、利用者や医療関係者が決めるべきことではないはず。介護職が主体的に、引き受けるべき医療行為を選別していくことが大切だと思います。
→次は【理想は介護と医療、看護の連携】