【性の介助は介護に含まれるのか】
障害者福祉の問題はここではいったん置き、高齢者に限って言えば、公的介護保険制度で提供するのは生活介護です。介護の必要な高齢者もできるだけ自立した生活を送り、人生の最期を迎えるまで人間としての尊厳を保てるよう、社会全体で支えるというのが、介護保険制度の理念です。では、この「自立した生活」に性欲も含まれるのでしょうか。
この調査によると、利用者に性欲があることは、7割以上のヘルパーが当然だと考えています。利用者が「性の介助」を依頼したくなることを「理解できる」と答えたのは3割弱で、4割弱は「いいえ」という回答。しかし「いいえ」とほぼ同数のヘルパーが「わからない」と答えており、そこに介護の現場での性の問題をどうとらえるかについての戸惑いが見て取れます。
一方、利用者が介護職に「性の介助」を依頼することについては、6割近いヘルパーが「間違っていると思う」との答え。つまり、性の介助を依頼したいという利用者の気持ちを否定はしきれなくても、実際に依頼されては困ると考えており、性の介助は介護に含まれない、という考え方が大半を占めているようです。
再び、調査報告書から現場の声を紹介してみましょう。「利用者からの性的欲求に応えることまで要求されるとしたらヘルパーを辞める」「性の問題が起こったときは、利用者が、させてくれるかな、程度で言っていることを、介護職が凛とした態度で断ることが大切」「性介助の専門性を持たないものが利用者の性欲の解消に関わるべきではない」
「同性の相談者が訪問して話を聞くといった対応はどうか」「性の問題は介護職が直接的に介助するのではなく、利用者の気持ちを切り替えるなど、対応に工夫が必要」「利用者の性の話題を上手に聞いてあげられる話術を持っていたいと思う」「利用者に性的欲求があるのは当然だし、否定できない問題だが、介護職がどこまで対応するかは線引きが難しい」
「対応するのは難しい」「対応したくない」という声がほとんどです。
→最後は、【性の介助を全否定してよいのか】