【性の介助を全否定してよいのか】 
 とはいうものの、性の介助は一切しない、という対応は正しいのでしょうか。「手を握る」に代表される、スキンシップについては? 独居の高齢者が、寂しいから少しの間、手を握らせて、と頼むことすら間違っていると思うヘルパーは多くはないでしょう。では、手を握るのはいいが、胸やお尻に触るのはダメ、という線引きをすればいい? いや、そんな簡単なものではないはず。だからこそ、この問題への対処は難しいのです。

 この調査報告書では、性的欲求には3つあると分析しています。一つは「安定を基礎とした性的欲求」、つまり安心したいからスキンシップがほしい、というもの。2つ目はまだまだ自分は元気だ、ということを誇示したい「自尊心を基礎とした性的欲求」。先に紹介した「これでも昔はよく使ったんだ」と陰部の話をしたがる男性高齢者などは、このタイプでしょう。もう一つは気持ち良くなりたいという「快楽を基礎とした性的欲求」。若者と同じように性欲を満たすことを考えているタイプです。

3番目のタイプの性欲の解消にまで、ヘルパーなどの介護職が応えていく必要はないと思います。しかし、繰り返しになりますが、スキンシップを求めている人までシャットアウトはできないですよね。元気であることを誇示したい人も、言動は過激なようですが、加齢による衰えを感じて抱いた寂しさや恐れの裏返しであることが多いはず。それを思うと、性的な話題はうまくいなしたりかわしたりしながら、なんとか気持ちは元気づけてあげたい、という気もします。

しかし、人の欲望というのはエスカレートしていくもの。良かれと思って、手を握らせてあげたら、次はお尻を触りたいといってくるかもしれません。その時はいったいどうすればいいのでしょう?

このあたり、どう対応するかは、利用者の状況やキャラクターにもよるので一概に何とも言えません。この3つの分類にしても、実際に体験したヘルパーによって、受け止め方が変わり、分類も変わってくるのかもしれません。ここまで引っ張っておいてなんですが、性の問題も含めて、やはり対人サービスに正解はないと思うのです。

ただ、こうした問題が起こり、ヘルパーが困っているとしたら、チーフヘルパーなり事業所長なりが、なぜそういう言動が出てくるのかという背景も含めて現状をしっかり把握し、きちんと対応を考える必要はあると思います。一番怖いのは、事業所側が「我慢しろ」「聞き流せ」と押さえ込み、利用者側も「金を払っているのだから言うことを聞け」という態度に出ること。ヘルパーが一人でこの問題を抱え込むことだけは避けるべきです。

結論から言えば、性の問題が起こったら、対応はケースバイケースになりますが、事業所内で問題をオープンにして情報を共有し、対応をみんなで考えていくべきでしょう。その上で、自分としてはここまでは許せる、ここからは受け容れられないという、自分なりのガイドラインをしっかり持つことが大切ではないかと思います。

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