マンション管理/マンション管理・購入後の基礎知識と注意点

管理組合と管理会社の「格差」を埋めろ!!

マンション管理を取り巻く環境にも『格差の波』が押し寄せています。管理会社との「知識格差」「経験格差」などがそうですが、こうした溝を埋めるにはどうすればいいのでしょうか?

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


マンション管理に忍び寄る「格差」の波


管理会社と管理組合の格差を埋めろ
今、日本では、いたる所で「格差」が生じています。政治の世界では選挙をめぐる「1票の格差」。経済の世界では、都心と地方の「地域格差」や大企業と中小企業の「収益格差」。また日常生活でも、我々に最も身近なところで「所得格差」など、枚挙にいとまがありません。昔から「金は天下の回りもの」などと言いますが、実際は、一部のお金持ちに大金が“偏っている”のが現実で、日本の個人金融資産1500兆円の内訳を見ても、その所有者は大半が高齢者によって占められているわけです。

まさに「勝ち組」「負け組」の線引きが、より加速されていく格好ですが、さらなる課題として近頃は、情報化社会の到来を受けて「情報格差」も深刻になっています。「デジタルデバイド」という言葉が指し示すように、パソコンやインターネットといったIT(情報技術)を利用できるか否かによって格差が生じる社会になりつつあるのです。

本コラムで5回目となる、シリーズ「管理組合のマネープラン」の中で、管理組合が管理会社にあやつられることへの警鐘を鳴らし続けてきましたが、こうした“あやつられ”の構図(上下関係)が出来上がるのも、そもそもの原因は管理組合と管理会社の「知識格差」や「経験格差」にあることに気付かなければなりません。マンション管理を取り巻く環境にも、『格差の波』が押し寄せているのです。

管理会社になめられる管理組合


ただでさえ意識や関心が低く、後回しにされやすいマンション管理が、その上に、知識面や実務経験面で管理会社に「差」をつけられたら、マンション居住者(組合員)は手も足も出ないのは想像に難しくありません。大規模修繕工事を控えたマンションに対し、管理会社の担当者が

   『工事費が足りないので、今度の大規模修繕工事では銀行から3000万円借りて下さい』

と平気で提案するのも、長期修繕計画が管理会社の“売上予定表”となっているからです。乱暴な表現をすれば、完全になめられているのです。

修繕積立金が不足(財政難)しているのも、居住者のマンション管理に対する知識が不十分なのも、本人(管理組合)の責任であって、委任(=業務を委託しているだけ)の関係にしかない管理会社には業務上、直接関係ないと言われれば、確かにその通りです。しかし、自分の成績や企業の利益ばかりを追求し、顧客(管理組合)の利益や満足度をないがしろにする管理会社に将来がないのも、また事実でしょう。

セカンドオピニオン=マンション管理士を活用する


そこで、「マンション管理士という国家資格者でもある第三者をセカンドオピニオンとして採用し、コンサルティングを受けてみてはどうか」と、マンション管理コンサルタント会社「シーアイピー」(http://www.cip.co.jp/)の須藤社長は提案します。

マンション管理士とは、2001年に施行された「マンション管理適正化法」によって国家資格として誕生した「管理組合の管理者等またはマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言・指導・援助を行なうことを業務とする者(同法第2条の5)」です。実際に管理組合と契約し、日常管理のコンサルタントを行なっている管理士は多くない印象ですが、「公平」「中立」な視点でサポートを受けたい管理組合には利用価値があるでしょう。

その際、「ひと口にマンション管理士といっても、資格者なら誰でもいいというわけではありません。以下の5つの要件に当てはまるかどうかを確認しながら、適材者を探すことが重要です」(同氏)とアドバイスしてくれました。


  1. 管理会社に勤務していた経験がある
    (実務経験を持ち、業界の表裏も知っている)

  2. 勤務経験がない場合、少なくとも10棟以上の管理組合でコンサルタント実績がある
    (多種多様なマンションでの実務経験がないと、柔軟な対応力が身に付かない)

  3. 専門性の高さよりも、専門家との人脈がある
    (管理実務は業務範囲が広いので、法律など特定の分野に深く精通するよりも、様々な分野に対応できるよう、信頼できる専門家同士のネットワークを持っていることが重要)

  4. プレゼンテーション(説明)能力がある
    (管理の知識が少ない理事や区分所有者に対しても、分かりやすい説明ができることが必要)

  5. 管理費を精査できるノウハウを持っている
    (管理費削減は、単純に安くすればいいという発想ではダメで、適正価格におさめることが重要。過剰なコスト削減は、かえって管理の質まで低下させる心配がある)

厳しいことを言うかもしれませんが、本来は「自己責任原則」のもと、管理組合自身が知識武装して管理会社と“対等”に渡たりあう(応戦)のが理想の姿です。敵対関係を構築することを意味するわけでは決してありませんが、一定の“緊張感”を持続させることが肝要なのです。

しかし現実問題として、実現が容易でないことも十分理解できますので、マンション管理士などのセカンドオピニオンを活用する意義は、認めるに足る状況といえるでしょう。マンションの資産価値はマンション管理の「質」に大きく左右されるだけに、自分たち(管理組合)で対応できない部分は第三者を活用し、管理の質を高める努力をしたいものです。


【シリーズ】管理組合のマネープラン
1.マンション管理運営に影を落とす財政問題
2.企業の「思惑」で決まる修繕積立金の“裏”事情
3.「無知・無関心」による管理費の“不正”流用
4.修繕計画を自社の「売上表」と見る管理会社
5.管理組合と管理会社の「格差」を埋めろ!!(本コラム)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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