ほぼすべての判断を「後見人」に委ねる「後見」
法定後見制度には、「補助」「保佐」「後見」という3つのタイプ(類型)があります。判断力のレベルに合わせてこの3つのタイプから1つを選び、サポートする範囲をある程度決めることができます。このうち、判断力が全くない方のために用意されているのが「後見」。
ほぼ一切の法律行為を「後見」を行う「後見人」に委ねる必要がある場合に利用します。
日常の買い物や結婚など、一部※をのぞき、ほぼ全ての法律行為についての同意権(取消権)※と代理権※が後見人に与えられます。つまり、介護保険サービスの契約から遺産相続まで、法律行為はほぼ全てにおいて、後見人が本人に代わって行います。また、たとえば高価な布団を買う契約や自宅の耐震工事を行う契約などを、「後見」を受けている被後見人が、後見人の同意なしに行った場合は、あとから後見人が取り消すことができるというわけです。
ほぼ全部を後見人が行う「後見」は、被後見人を強力に守る力がありますし、周囲の人にも、本人がどのようなサポートを受けているかがわかりやすいと思います。しかしほとんどを後見人に委ねてしまう分、本人が関わって判断できる部分がとても少なくなります。これについてはまた後で述べます。
※後見人に与えられない権限
1.日用品の購入などの日常生活に関する行為に関する権限
2.結婚、離婚、養子縁組、認知、遺言など当事者だけに効果が生じる事項に関する権限
3.治療行為、検査など、医療行為についての同意する権限
※同意権 本人が契約や取引など、法律行為を行う際に、後見人等が内容を検討し、本人に不利益がないことを確認した上で、その法律行為を行うことに同意する権限
※取消権 本人が後見人等の同意なしに、契約が取引など、法律行為を行った場合、後見人等がその行為を無効なものとして取り消し、原状に復する権限
※代理権 本人の代理として、契約や取引など、法律行為を行う権限