権利擁護が権利制限にならないために

わかりにくいのは、「補助」と「保佐」の違い。
「補助」は、ある程度は自分で判断できるかたのためにある、少しだけサポートする制度。「補助」相当の判断力のレベルの例を挙げてみると……
  • 行きつけの店で日常的な買い物はできるが、行き慣れない店に行ってその場で商品を見て適切なものを選ぶのは難しい。
  • スーパーで買い物はできるが、硬貨で支払うことができず、いつも紙幣で支払う。
  • 訪問販売員に言葉巧みに勧められると、商品が市場価格よりはるかに高くても気がつかずに購入契約を結ぶ
というかんじです。

自分で判断できる部分があるわけですから、この制度を利用するかどうかは、本人が決めます。また、同意権(取消権)と代理権は、ここまでなら補助人に与えてもいいよ、という本人の同意の上で、家庭裁判所(家裁)の審判を受けて、補助人に与える権限の範囲を決めます。

一方、「保佐」は、判断力が明らかに十分でないかたをサポートする制度。「保佐」相当の判断力のレベルの例を挙げてみると……
  • 家族が年金等の金銭管理をして、必要額を月1回渡しているが、周囲に「家族が私のお金をみんな持っていく」と訴え、家族が果たしている役割を理解できない。
  • 高額商品の購入に際し、販売員から勧められて消費者金融の借入契約書にサインをしたが、そのことを理解していない。
という感じです。

「保佐」では、この制度を利用するかどうかについても、本人の意志は問われません。本人がサポートの必要はないと思っていても、申立者※が必要と判断して申し立てれば、「保佐」開始の審判が行われることになります。代理権については「補助」と同じように、審判によって与える権限の範囲を決めますが、同意権(取消権)については本人の同意も審判も必要ありません。不動産の売買や贈与、訴訟、保証人契約、お金を借りる契約など、民法で定められた9項目については、自動的に保佐人に同意権(取消権)が与えられることになります。


法定後見人の申立者(開始手続きを請求できる人) 本人、配偶者、四親等内の親族、すでにほかのタイプ(類型)を利用している場合はそのタイプの援助者・監督人、検察官、任意後見の受任者、任意後見人、任意後見監督人、区市町村長


この「補助」と「保佐」、権限を与える範囲をある程度選べるために、どちらを利用することが本人の権利擁護のために適切であるか、判断が難しいのです。本来、自分が行う契約については、自分で判断し、責任を持つことが望ましいですよね。しかし補助人や保佐人に多くの権限を与えれば、本人を守ることはできますが、同時に本人の判断や責任、あるいは自由意思を制限することになります。

最も多くの権限を、サポートする人(後見人)に与える「後見」を利用すれば、悪徳業者にだまされることもなくなるでしょう。しかし、被後見人が自分だけの判断で法律行為を行うチャンスはほとんどなくなります。もちろん、後見人は被後見人の意思を尊重しながら本人の権利、利益を守るのですが、「被後見人だけ」の判断での契約等はなくなります。

人はみな、いつも正しい判断ができるわけではありません。
判断力に問題がない人でも時には間違った判断をし、そこから何かを学ぶこともあります。しかし、常に後見人等がそばにいて正しい判断を行えば、本人は間違いから何かを学ぶ機会、権利も失うことになります。

「後見」については、「判断力がない」方が対象とされていますから、そこに大きな問題はないかもしれません。しかし、一部行為についての同意権(取消権)や代理権を与える「補助」や、「保佐」の場合、同意権(取消権)や代理権を使う権限を補助人・補佐人がどこまで得ることが、本人の権利擁護につながるのか。十分に検討する必要があります。特に、知的障害者や精神障害者の場合、こうした機会、権利を取り上げるデメリットを忘れてはならないと思います。

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