しかし見方を変えると、管理会社との“相性”が合わない場合、快適なマンション生活が送れなく危険があるともいえます。そこで、管理会社と上手に付き合うにはどうすればいいのか? 一緒に考えてみることにしましょう。
管理組合と管理会社は「委任」の関係
まずは、管理組合と管理会社がどのような関係で結ばれているのか、両者のつながりから見ていきましょう。管理組合と管理会社の間には「管理委託契約」が成立しており、管理組合が管理会社へ報酬を支払って管理業務をお願いする形が一般的です。つまり、管理組合が「委任者」、管理会社が「受任者」という“委任”の関係になっているのです。
より詳しく説明すると、管理会社は管理業務を代行している立場ですので、正確には「準委任」と解され、他方、清掃や設備の保守点検などは仕事の完成を目的として行われる「請負」と解されることから、管理委託に関する両者の関係は「準委任(契約)」と「請負(契約)」が混合した契約(関係)となっています。
管理組合という団体そのものの法的性格がいささか不明確で、その上、委託する業務範囲が多岐にわたることが、こうした契約特性(=混合した契約)を生じさせるのでしょうが、いずれにしろ基礎的位置付けは「お願いする側」と「お願いされる側」のどちらかしかありません。そして、管理組合は「お願いする側」ですので、常に“主導的立場”にいなければなりません。裏を返せば、管理会社に主導権を持たせないよう注意しなければならないのです。それだけに、第1点目として、管理会社と上手に付き合うためには、管理業務に対する「指示系統」(主従関係)をはっきりさせておくことが重要となります。
「責任の所在」=「権利義務関係」を明確にしよう
平成15年に「標準管理委託契約書」が大幅に改定されましたが、その目的は、管理会社に都合のいい内容で契約させられていた実態を修正するため、お互いの責任関係を対等かつ明確にする狙いがありました。
<マンション標準管理委託契約書の主な改正点>
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たとえば、管理会社が注意を促したにもかかわらず、管理組合が承認しなかったためにトラブルが発生したとします。その場合、損害は誰が負担することになるのでしょうか?管理会社はトラブルの発生を予見し、事前に管理組合へ報告しています。それでも、管理業務を受任する側である以上、管理会社が責任を取らなければならないのでしょうか?こうした時、「契約書には何て書いてあるか?」を調べることで、“責任の所在”が分かるわけです。それだけ、契約書には重要な意味が込められているのです。
さらに、改正後の標準管理委託契約書には、委任契約における受任者(管理会社)の義務として「善管注意義務」が規定され、また、「管理会社が管理事務を第三者(各種専門業者)に再委託しても、その責任は管理会社が負う」といった条項も盛り込まれました。どちらも、管理会社に対する管理責任の範囲を指し示したものです。
こうした改正内容から読み取れることは、「契約当事者間の権利義務関係」=「責任の所在」が明確になっていることこそが、良好なマンション管理につながるということです。管理組合と管理会社が互いに責任のなすりつけ合いをしていては、両者の関係がうまく構築されるはずもありません。それだけに、委託(または受託)する業務範囲と管理責任の範囲をそろって委託契約書に盛り込み、明確にしておくことが管理会社と上手に付き合うためには必要となるのです。
「管理組合」と「管理会社」 相互の信頼関係がカギ
そして最後は、相互の信頼関係がカギとなります。この点については説明するまでもありませんが、常に「だまされないように!」と“性悪説”に立った視点で管理会社を見ていては、安心して管理業務を任せられるはずもないでしょう。よきパートナーとして信頼を寄せることが最大の秘訣なのです。
以上、3つのポイントを参考に、管理会社とは上手に付き合っていきましょう。
<管理会社と上手に付き合うための3つのポイント>(まとめ)
- 管理業務に対する指示系統をはっきりさせておく
- 「責任の所在」=「権利義務関係」を明確にしておく
- よきパートナーとしての相互の信頼関係
【シリーズ】マンション管理の基礎講座
#1 マンション管理って何なの?
#2 管理組合の仕組みを知ろう
#3 管理会社との上手な付き合い方(本コラム)
#4 管理規約って何?その重要性を知る