43%のマンションで積立金が不足する |
そして、管理費や修繕積立金の滞納も頭の痛い問題で、マンション会計に暗い影を落としています。そこで、今回は管理費等にスポットを当て、国交省のアンケート結果からマンション会計に関する様々なデータを紹介します。
修繕積立金制度のないマンション 2.4%
まずは、とても驚かされる数字からご紹介しましょう。快適なマンション生活を送る上で、建物を維持・修繕するための費用、修繕積立金が必要不可欠であることは説明するまでもありませんが、国土交通省が行ったマンション総合調査(平成15年)によると、2.4%の管理組合には修繕積立金制度がないそうです。おそらく、大規模修繕工事を始める直前に「一時金」として組合員から徴収するのだと思いますが、空恐ろしいかぎりです。金額が高額になれば支払えない居住者も出てくるだけに、修繕計画を不安定にさせる要因といわざるを得ません。早急に、積み立て制を導入すべきでしょう。
続いて、修繕積立金制度がある97.6%の管理組合では修繕積立金の金額をどういう根拠で決めているか、見てみましょう。77.1%が「長期修繕計画の必要額を参考」に決定しており、以下、「管理費の一定割合」10.5%、「近隣の他マンションの例を参考に決めた」1.4%となっています(円グラフ参照)。
「管理費の一定割合」とは、ある住戸の管理費が1万5000円とすると、1万5000円のたとえば10%相当を修繕積立金と決めてしまい、毎月1500円を修繕積立金として徴収する方法です。管理費が2万3000円の住戸では、積立金は2300円(2万3000円×10%)となります。徴収割合(パーセンテージ)は10%に限りませんが、文字通り、管理費に対して一定割合を自動的に修繕積立金の金額と決めてしまうやり方です。
43%のマンションで修繕積立金が不足する
一見すると、単純明快で金額がガラス張りのようにも思えますが、しかし、見えざる落とし穴には注意しなければなりません。というのも、前出の例でいえば「10%」というパーセンテージが、得てして“根拠のない数字”であることも珍しくないからです。「ちょうど切りがいい」というだけの理由で、10%になっていることもあるのです。
そのため、修繕積立金の残高不足につながることも考えられ、修繕工事に悪影響を与える心配が出てくるのです。日本経済新聞社が全国の築20年以上のマンションを対象にした調査では、43%の管理組合が「修繕積立金が不足している」と回答しており、“適正”な金額を“適正”な徴収方法で集めていないことが、こうした事態を引き起こしてしまうのでしょう。お心当たりの管理組合は、早速に会計内容を見直す必要があるといえます。
1年以上の滞納者がいるマンション 全体の18.3%
と同時に、管理費等の滞納についても目を光らせることが欠かせません。マンション総合調査によると、3カ月以上滞納している居住者が1世帯でもいるマンションは全体の32.1%にのぼり、6カ月以上は20.4%、さらに1年以上も18.3%いることが分かっています。
<管理費・修繕積立金の滞納戸数割合> (単位:%)
滞納なし | ~1% | ~2% | ~3% | ~4% | ~5% | ~10% | 10%超 | |
3カ月以上 | 67.9 | 10.7 | 5.3 | 5.5 | 2.6 | 2.4 | 4.4 | 1.1 |
6カ月以上 | 79.6 | 7.5 | 4.8 | 2.7 | 1.0 | 1.9 | 1.7 | 0.7 |
1年以上 | 81.7 | 7.8 | 4.0 | 2.6 | 1.2 | 0.9 | 1.5 | 0.4 |
管理費等の滞納には“常習性”があり、常に、同じ人が滞納を繰り返す傾向があります。当人には「1人ぐらい遅れても問題ないだろう」という考えがあるようで、罪の意識がないことも少なくありません。そのため、こうした要注意人物は重点的にマークし、滞納が2カ月続いた時点で早急に注意あるいは警告を発しなければなりません。早め早めの対応が重要となります。
マンション会計は、たとえば外壁の劣化というように、直接、目に見えるものではありません。また、簿記などの基礎知識も必要となるため組合員の中でも敬遠されやすく、そのことが、修繕積立金不足や管理費等の滞納につながってしまうと考えられます。しかし、マンション会計をないがしろにするわけにはいきません。資金がショートしてしまったら、組合運営が止まってしまうからです。それだけに、賢いマンション暮らしのためにも、会計に強い人材を育てるなどの工夫(対応策)が欠かせなくなってきます。
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