管理組合を襲う高齢化と高齢化の波 |
ご存じ、人口構成が高齢化していることで、世間では様々な制度疲労が散見されています。マンションという1つの“コミュニティー”においても同様のことが起ころうとしており、その結果、マンション管理が機能不全となる恐れが出てきています。そこで、こうした現状にどう対応すればいいのか?……今回は、浮き彫りとなった問題点を整理し、併せて、解決策についても考えてみたいと思います。
役員のなり手不足は全体の8割 日経マンション調査
日本経済新聞社が昨年(06年)、築20年以上の分譲マンションを対象に行ったマンション調査によると、居住者の高齢化などを理由に役人のなり手不足に悩む管理組合が全体の8割に達していることが分かりました。通常、役員は順番制などにより選出され、任期2年程度で組合員が持ち回りで役務を引き受けます。役員の仕事は千差万別で、マンション内で起こる様々な問題を解決するための理事会運営を中心に、その他、理事長や会計担当・幹事などに抜擢(ばってき)されると、さらに、業務や職責が追加されることとなります。
そのため、時間的な融通はつけやすい半面、気力あるいは体力面での不安を抱える高齢者にとっては、役員を引き受けることが“負担”以外の何物でもなくなってしまい、そのことが「役員のなり手不足」へとつながっています。国土交通省が行った「マンション総合調査(平成15年度)」でも、「高齢のため」が役員を引き受けない理由の2番目に挙がっており、さらなるマンション住民の高齢化が、組合運営を「減速」させる要因になろうとしています。
高齢者の「孤独死」 13%のマンションで発生
また、居住者の高齢化が修繕積立金の滞納に結びついている現状も見えてきました。「年金生活で資金を負担できない高齢者が増加している」というのが、その理由です。住宅ローンは完済しているケースが多いとされる一方で、収入が限られている年配の方にとっては、毎月の管理費等の負担は容易でないことが分かりました。
その結果、管理組合は「修繕積立金不足」に直結。老朽化したマンションでは、より大規模修繕工事のための費用(積立金)が必要となるにもかかわらず、資金不足が修繕工事の先延ばしを誘引し、さらなる老朽化へと“悪循環”を繰り返すことになります。今般、大型地震が頻発しているだけに、耐震改修工事の遅れが命取りとならないようにしなければならないでしょう。
さらに、もっと深刻な問題として、誰にも気付かれずに自宅で死亡する高齢者が全体の13%で発生しているという事実も、今回の日経マンション調査で明らかになりました。同調査では、「1986年以前に建てられたマンションの13.1%に、過去、マンション内で孤独死があった」としており、「そのうち、築30年以上が69.1%を占め、建物が古くなるほど住民が高齢化して孤独死の可能性が高まっている」と結論付けています。このことは同時に、「高齢化」と並行して「単身化」も促進されていることを物語っており、配偶者に先立たれた高齢者が1人で生活を続けている現状が透けて見えます。
以上をかんがみ、最後に、管理組合はどう対応すればいいのか? …… 以下の3点が解決への近道と考えられます。
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「高齢者がどの程度いるのか?」「そのうち、一人暮らしの割合は?」など、年齢構成を初めとする現状が把握できていなければ、対策を立てることはできません。そこで、想定される問題を洗い出すことが第一点目となります。次に、浮き彫りになった問題点を解決するための対策委員会を設置し、集中的に議論することが2番目として挙げられます。そして、最後にマニュアル化することで、危機管理体制を整えることが可能となるのです。
どうしても自分達だけでは対応できなければ、行政あるいは専門家の力を借りる方法も有効です。現状を嘆いても何も解決しません。まずは、一歩踏み出すことから始めてみましょう。
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