電話加入権の価値をご存じですか? |
そのせいか、「固定電話」という言葉自体、“死語”となりつつある雰囲気で、電話加入権の価値を意識する人は少なくなっているような印象です。
しかし、電話加入権はれっきとした「財産」です。質権の設定が認められており、売買の対象となる(=換金価値のある)権利なのです。それだけに、すでに当該権利を保有している方は加入権の財産的価値を把握しておく必要があるでしょう。そこで、電話加入権の市場価値はいくらぐらいなのか?……各種データをもとに、真相に迫ってみました。
05年3月 施設設置負担金は半額に値下げされる
まずは、用語の確認から始めましょう。「電話加入権」とは、「加入電話契約者が契約に基づいて加入電話の提供を受ける権利」そのもののことを指します。また、同義語として「施設設置負担金」という言葉も出てきますが、NTT東日本のホームページによると、施設設置負担金とは「NTTの市内交換局から、われわれ自宅内までの加入者回線の建設費用の一部を負担してもらうための金員」と説明されています。「電話加入権」と「施設設置負担金」……正確には異なった意味の言葉であることが分かりました。
そして、この施設設置負担金、同社ホームページには「基本料の前払い的な位置付け」とも記されています。当該負担金のおかげで電話の早期普及が促進され、月々の基本料(回線使用料)が割安な水準を維持できていることをうたっているのです。確かに、「電話」という通信手段が目新しい頃は、施設設置負担金に大きな意義があったことは間違いないでしょう。
しかし、時代は変わり、施設設置負担金を取り巻く環境は変革の時を迎えています。1947年に誕生した同制度、固定電話の契約者数が減少傾向をたどり始めた中で、インフラ拡張のための投資資金を「前払い」の形で受け取る意味は薄れてきていると言えるのでしょう。
<加入電話の施設設置負担金の変遷> (東京:単独電話の場合) 1952(S27)年当時 設置料:4,000円+負担料30,000円(合計34,000円) 1960(S35)年4月 設置料:10,000円 1968(S43)年5月 施設料:30,000円 1971(S46)年6月 施設料:50,000円 1976(S51)年11月 施設料:80,000円 1985(S60)年4月 工事負担金:72,000円 2005(H17)年3月 施設設置負担金:36,000円 |
こうした流れを受け、高度経済成長期には“倍々ゲーム”を繰り返してきた施設設置負担金も、85年4月に民営化してNTTへと衣替えして以降、値下げの方向へと舵(かじ)を切りました。そして、05年3月には3万6000円(税抜き)まで引き下げられ、現在も同水準が継続されています。あたかも、バブル期に「億ション」だったマンションが、今では半値以下になっている……このような印象すら感じさせる一連の“値下げ劇”となりました。
中古市場での取引価格は1万円以下
それでは、値下げに伴い電話加入権の価値はどうなってしまうのでしょうか? もともと、NTT側は新規販売した電話加入権の“買い戻し”はしておらず、その結果、セカンダリー・マーケット(中古加入権の流通市場)が構築され、通信事業者によって売買されるようになっています。
そして、値下げに伴う市場価格への影響について、NTT側は「質権法や税法等における電話加入権の取り扱いは、市場の需給関係に応じて価格が設定されることを前提としており、加入権価格は保証されるものではない」と前置き。「施設設置負担金の額は電話加入権の価格ではなく、施設設置負担金の見直しにより電話加入権の市場価格が低下しても、その市場価格まで保証すべき義務は契約上、存在しない」としています。
つまり、負担金の値下げには経済合理性が伴っており、既存加入者との公平性を欠くものではない、と主張しているのです。どうやら、われわれ既契約者との“溝”(みぞ)は埋まりそうにありません。
となると、気になるのが実勢価格ですが、全日本電話取引業協会の調査によると04年10月現在、1万1000円(取引業者間の仲値)となっています。3年前のデータですので、現在はさらに下回っていることでしょう。事実、ネットで調べてみても「電話加入権の買取価格2340円」「ADSLとのセット販売だと0円(無料)」といったプライシングが散見されるようになりました。「価格破壊」の波はさらに広がり続ける印象です。
悲しいことですが、これを契機に、まずは電話加入権への関心を深めることから始めてみるといいでしょう。