「相続」を「争族」にしないためには? |
確かに、ひと口に「資産」といっても、その中身は様々でしょう。ご存じ、日本の持ち家比率は全国平均で62%です(平成17年国勢調査)。4割弱の人は数字上、相続が発生しても相続財産の中に不動産(自宅)が含まれないことになります。しかし実際、わが国では相続財産の“半分”が不動産(土地と建物)で占められています(下図参照)。金額にすると、およそ6兆円(年間)もの規模になります。
それだけに、マンションをお持ちの方は相続の知識が欠かせなくなってきます。決して、遠い先の話ではありません。「相続」を「争族」にしないためにも、今のうちからしっかりと勉強しておくことが必要です。
換金性・流動性の悪さが、遺産分割をより複雑にする
なぜ、不動産は遺産相続の円満分割に支障を来たすのか?―― まずは、根本原因の究明から始めることにしましょう。その理由は不動産が持つ特殊性と密接な関係があります。預貯金や有価証券などと異なり、「換金性」「流動性」が悪いことが影響しています。
そもそも相続とは、被相続人の財産が相続人へと承継されること。相続人が1人なら問題ありませんが、2人以上になれば必ず遺産を分割する必要が出てきます。そのため、たとえば相続財産がすべて現金であれば、「相続人3人で3分の1ずつに分割しよう」といった具合に均等分割できますが、土地や建物はそうもいきません。代替案として、3分の1ずつの「共有名義」にするといった方法はありますが、やはり売却して現金化するのが最もスマートな解決方法です。
しかし、取引金額が高額になりやすい不動産を短期間で売却するのは容易ではありません。都心一等地の物件を相場の半分で売りに出すならまだしも、利用価値の劣る地方の土地となると、買い手を見つけるのは至難の業です。このように、「換金性」や「流動性」(=売却のしやすさ)の悪さが相続手続きを面倒にしてしまいます。「不動産」=「不可分財産」―― 「相続」を「争族」にしてしまう所以(ゆえん)が、こうしたところにあるのです。