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施設に名前をつける命名権、いくらかかる?(3ページ目)

スポーツ施設や公共施設についている企業の名前、一体いくらぐらいなのでしょう。運営費を捻出するこの命名権(ネーミングライツ)ビジネスの現状に迫ります。

執筆者:石原 敬子

早くも曲がり角に?!

お金
運営費をまかなおうと募集したけれど・・・申込みゼロ!なんてことも
実際は、有名な施設ばかりではなく、スポンサーを募集したものの、申込みのないケースもあります。スポンサーが集まらない理由としては、(5年ですら)契約期間が長いとか、契約金が高いことなどのようです。そのため、契約金を引き下げて、やっと契約成立となったケースもあります。

施設側としては、命名権を売った資金で、赤字の施設の維持運営費をまかなうというのがそもそもの目的。今後も、財政の厳しい自治体で、公共施設の命名権が次々と売りに出されることが予想されます。しかし、そのような地域の施設ほど、スポンサーがつきにくいのが現状です。全国ネットで放映されるような大会やイベントがなければ、広告効果は期待できないからです。

この命名権ビジネス、問題点は他にもいくつかありそうです。

イベントそのものに冠がついている場合、その施設の命名権を他の企業が持っていると、不都合が生じます。イベントのスポンサーと施設のスポンサーとが競合するようなライバル企業だと、そこでの開催を避けることも考えられます。

また、名古屋市民会館の命名権を取得した中京大学のケースでは、「名古屋大学文化市民会館」といわれると、大学のキャンパスに足を運んでしまう人が多発するのではないかと思われます。

日本独特の短期契約もネックです。同じ施設なのに、2年や5年で名称が変わると、利用者は混乱するでしょう。カーナビの対応が間に合わなければ現地にたどり着くことは困難です。自治体の無駄な支出を抑えるはずが、却って道路標識の架け替えにより、その分税金からの負担が増えてしまえば元も子もありません。

地方財政の支出を抑えるにはもってこいのビジネスモデルではあるのですが、成功例のノウハウだけをそのまま真似をしてもうまく行かないことでしょう。その地域の特色を生かしたり、地元企業のCSR意識をうまく活用したりと、個々の案件で、工夫が必要なのかもしれません。


【関連サイト】

「いまさら聞けない経済用語 CSR」

【関連リンク】

「国家財政・税金・公共投資」

「○○の経済的影響を探る」
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