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教皇(ローマ法王)を知ろう(3ページ目)

第264代目の教皇(ローマ法王:The Pope)ヨハネ=パウロ2世が亡くなりました。教皇(ローマ法王)とはどんな存在なのか、決定方法は、ヨハネ=パウロ2世の業績とは、などなど基礎知識をまとめてみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【キリスト教の普及とローマ教会の首長としての教皇権威の確立】
2ページ目 【十字軍の迷走・失敗と、宗教改革による教皇権威の失墜、そして再建】
3ページ目 【バチカン市国の誕生と、「現代的教皇」ヨハネ=パウロ2世の活躍】

【バチカン市国の誕生と、「現代的教皇」ヨハネ=パウロ2世の活躍】

バチカン市国の誕生

さて、19世紀になり、イタリア統一運動が始まりました。結局これを制したのは、サルディーニャ王国で、これが教皇領を含むイタリアを統一、イタリア王国を建国しました(くわしくは拙稿「W杯と政治」をご覧下さい)。

教皇領を奪われた教皇は、ローマ市街の西方、バチカンのサンピエトロ大寺院などがある一帯にこもり、イタリアと対立します。両者が和解したのは、1929年のことで、ラテラノ条約により、バチカンの教皇所有の土地が、主権国家として誕生することになります。これが「バチカン市国」のはじまりです(拙稿「世界最小国家、バチカン市国とは」もご参照下さい)。

そして教皇(ローマ法王)は、世界11億人ともいわれるカトリックの指導者として、カトリックのみならず、多くのキリスト教信者の尊敬を一身に集める精神的支柱として今もなおあり続けているわけです。

ヨハネ=パウロ2世の功績

さて、264代目の教皇(ローマ法王)であったヨハネ=パウロ2世は、イタリア人以外としては456年ぶり、そしてスラブ系民族(彼はポーランド人)としては史上初の教皇(ローマ法王)となりました。

彼は、「行動する教皇」として、精力的に動き回ります。彼はまさに在位中、日本を含む129カ国を訪問し、宗教和解と平和を訴え続けました。カトリックと対立してきたギリシャ正教会の総本山的存在のギリシャや、同じく国教会を立てて独立したイギリスへの訪問は、まさに歴史的意義の深いものでした。

そして、イスラム圏にも訪問しています。2001年のシリア訪問では、教皇として始めてイスラムのモスクに足を踏み入れ、シリアのムフティとよばれる法学最高権威者と一緒に合同で礼拝を行いました。

さらに、そもそも宗教否定を行っていた社会主義政権下のソ連にも訪問したり、ヒンドゥー教の力が強いインドにも訪問をしています。

また、ローマ教会によって迫害されたガリレイの名誉回復を行ったり、教皇として、十字軍による侵略行為の謝罪を行ったことも、有名な事実です。

また、政治でも発言力を行使。特に、まだ冷戦下のもと社会主義政権下にあったポーランドにおいて、民主化運動をすすめる「連帯」を支持する発言をし、東欧の民主化に一定の役割を果たしたといわれています。

そのためなのか、彼は暗殺未遂されてしまいます(1981年)。しかし、病床から彼が「彼(犯人)の罪を許す」と発言したことは多くの人々に知られています。

また、妊娠中絶や安楽死を「死の文化」として断固反対の姿勢を表明。これは、世界のキリスト教国に、大きな影響を与えたと言えます。これに対しては、「保守的である」という反対の声も上がりました。

また、バチカン改革にも取り組み、特に教皇の次の位の聖職者である枢機卿(すうききょう)を、西ヨーロッパ人だけでなく、広く各国から任命したこともまた、大きな出来事でした。

日本人からも、白柳誠一枢機卿、濱尾文郎枢機卿がヨハネ=パウロ2世によって任命されています。

まさに、キリスト教内部・そしてイスラム教とも宗教和解を実現しようとした「行動する教皇」「寛容な教皇」として、カリスマ的地位を築いてきたのでした。

次期教皇(ローマ法王)決定方法とは

さて、そのヨハネ=パウロ2世が亡くなったわけですが、次期法王は、枢機卿の会議、いわゆる「コンクラーベ」によって決定されます。枢機卿で議決権を持っているのは80歳未満の枢機卿であり、現在その数はおよそ120名ほどのようです。

「コンクラーベ」のそもそもの意味は「鍵のかかった」というような意味のラテン語であり、完全密室の中で教皇(ローマ法王)選挙が実施されます。そして、3分の2以上の得票を獲得した者が、次期教皇(ローマ法王)に決定します。

もっとも、すんなり3分の2以上の得票を受ける候補者がでるわけではなく、しばしば、この得票を誰かが得るまで、えんえんと「コンクラーベ」は行われていきます。まさに、「根比べ」ですね。

そして、決まったときは暖炉に乾いた藁をくべて白い煙を出し、人々に知らせることになっているのが通例です。

さて、ヨハネ=パウロ2世の足跡を見て彼の死を悼みつつ、十数年に一度しかない、コンクラーベの様子に注目したいところです。

もうすでに、保守派とリベラル派の間の多数派工作が始まっているといいます。カトリック信者だけでなく、すべてのキリスト教教徒に影響を与えそうな次期教皇(ローマ法王)の人選から、目が離せません。

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【逐次更新】最新トピックス 今、最も話題を集めている政治のことがらについての最新情報がわかる記事やサイトを集めています。逐次更新されますのでお見逃しなく。

海外メディア CNN・BBCなど海外メディアによる政治の情報・解説サイトまたはページ。韓国三大新聞の日本語版サイトにもリンク。

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