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教皇(ローマ法王)を知ろう

第264代目の教皇(ローマ法王:The Pope)ヨハネ=パウロ2世が亡くなりました。教皇(ローマ法王)とはどんな存在なのか、決定方法は、ヨハネ=パウロ2世の業績とは、などなど基礎知識をまとめてみました。

執筆者:辻 雅之

(2005.04.04)

教皇(ローマ法王)、ヨハネ=パウロ2世が亡くなりました。教皇としてはかなりの長期間の在位で、その在位中、20世紀以降の新たな教皇の姿を示したという意味で、キリスト教の歴史に刻まれていくことでしょう。教皇について、今回はご説明します。

1ページ目 【キリスト教の普及とローマ教会の首長としての教皇権威の確立】
2ページ目 【十字軍の迷走・失敗と、宗教改革による教皇権威の失墜、そして再建】
3ページ目 【バチカン市国の誕生と、「現代的教皇」ヨハネ=パウロ2世の活躍】

【キリスト教の普及とローマ教会の首長としての教皇権威の確立】

キリスト教の誕生と使徒たちの活動

教皇(ローマ法王)とは、そもそも何なのか。このお話をする前に、まずはキリスト教の歴史からお話しなくてはなりません。

1世紀初頭のイエスの伝道と処刑、そして「復活信仰」によって、キリスト教の母体ができます。イエスの直弟子たちであった「使徒」たちが、イエスの教えを広めるため、イスラエルを飛び出して、あちこちで布教に努めます。

しかし、当時地中海世界を支配していたローマ帝国の人々の信仰に相容れないものがキリスト教にはあり、しかも皇帝崇拝を拒否するわけですから、帝国の厳しい弾圧にあいます。

特に、悪名高い皇帝ネロの弾圧は激しかったと伝えられ、使徒のリーダー的存在だったペテロなど、多くの殉教者を生みました。

キリスト教の普及と公認

激しい迫害にもかかわらず、キリスト教はどんどん広まっていきました。一方、ローマ帝国の力は衰えていきます。こうしたことから、やがて帝国内で、キリスト教の力で帝国再建をめざす動きが出てきました。

そのため、315年、コンスタンティヌス帝は「ミラノ勅令」を出してキリスト教を公認します。そして彼は積極的にキリスト教に介入し、325年のニケーア公会議で、イエスを神の子と認めるアタナシウス派を正当教義として統一します。

そして、テオドシウス帝にいたって、キリスト教は帝国の「国教」とされ(392年)、他の宗教がむしろ禁止されるに至ったのです。

これによって、キリスト教はヨーロッパの基礎宗教として、その基盤を築き上げることになったのですね。

教皇の「誕生」

そして、あいついで教会がつくられるようになりますが、その中で有力になったのが、ローマ教会と、コンスタンティノーブル(現在のイスタンブール)教会でした。後者は、後のギリシャ正教会の頂点教会となります。

そしてローマ教会は、さきほどでてきたペテロらの殉教の地であったということで、その教会の首長はペテロの後継者として尊重され、いつしか教皇とよばれるようになったのです。

さて、そうこうしている間にゲルマン民族大移動によって西ヨーロッパは大きく混乱し、その余波をもろにかぶった西ローマ帝国は滅亡する(476年)のですが、やがて西ヨーロッパに定住したゲルマン諸族のうち、力を持ったのがフランク族でした。

彼らはやがて勢力拡大とともに、教皇との結びつきを強め、小ピピンによる教皇領の寄進などもあり、カール1世による西ヨーロッパ統一にあたっては、教皇レオ3世が、カール1世に、「西ローマ帝国」の冠を授けるに至ります。

ここに、教皇は、西ローマ帝国の後継者決定権を持ち、西ヨーロッパの大きな権威として君臨することになるのです(その後のオットー1世への神聖ローマ帝国の冠授与、ナポレオンへの冠授与は、やはり教皇が行っているわけです)。

教皇権威の絶頂へ

王を超えた存在となった教皇の権威は、ますます高められていきます。

さて、こうした中で起こったのが「叙任権闘争」でした。教会が世俗化し、聖職売買などが起こるにつれ、これを問題視した教皇グレゴリウス7世は、こうした風土を粛正するともに、国王や諸侯がもっていた「聖職叙任権」、簡単にいうと聖職の任命権ですね、これを、教皇独占にしようとしました。

しかし、神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒ4世との間に、これをめぐる闘争が起こります。これが「叙任権闘争」なのですが、決着はあっという間につきました。つまり、教皇が皇帝を「破門」し、皇帝は(帝国内の諸侯が反旗を翻すのを恐れて)イタリアのカノッサで教皇に謝罪します。これが有名な「カノッサの屈辱」です。

これにより、教皇権力は絶頂に達しました。これがヨーロッパ中世の姿です。

しかし、やがて教皇権力に陰りが見え始めます。それが、「十字軍」でした。

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