ジンバブエドルはなぜインフレしたのか

ジンバブエドルはなぜインフレしたのか検証

ジンバブエドルはなぜインフレしたのか検証

今回は、インフレがなぜ起こるのか検証してみましょう。

【目次】  

マネーサプライの増加で通貨の価値が暴落

インフレが起こる原因はいろいろありますが、ジンバブエの場合は複数の原因が同時に、それも大規模に起こっったために、超インフレになったと思われます。一般的にインフレを起こす要因として、マネーサプライの増加があります。マネーサプライとは通貨の供給量で、これが増えると、国内に流通している通貨量が増えたことを意味します。
 
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ある国に1億個の製品と1兆円の通貨が流通していると、単純に割れば1個あたりの価格は1万円になる。1年後に通貨量が10倍に増えれば、1個あたりの価格は10万円になる。

ここで1つ例を挙げてみましょう。ある国に、1兆円分の通貨と1億個の製品が流通していたとします。それが1年後に10兆円に増えて、その国の製品の量は変わらなかったとします。最初は1個あたり1万円だった製品が、単純に通貨量が10倍に増えたら、値段が10倍の10万円になります。これが、マネーサプライの増加による価格上昇、つまりインフレのメカニズムです。

ジンバブエは2000年初頭、労働者からの賃上げ要求に対応したり、選挙費用を捻出するために、通貨のジンバブエドルを無節操に発行しました。そのために、物価が極端に上昇したことになります。
 

稚拙な経済政策で極端な製品不足に

インフレが起こるもう1つの要因として、国内に出回る製品の数が不足することがあります。これは、通貨の過剰供給とは反対の意味を持ちます。通貨量が1年後に1兆円で変わらなくても、製品が1000万個に経れば、結局製品1つあたりの値段は10万円に上がることになります。ジンバブエが物不足に陥った原因は、長年繰り返されてきた、ムガベ政権の稚拙な経済政策にありました。
 

農地の強制収用で農業生産性が低下

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ジンバブエのお店での支払いの光景。大量のお札を受け取らなくてはならない。

ムガベ政権の間違ったと評される経済政策は多くありますが、その1つが2000年に行われた、農地の強制収用です。それ以前のジンバブエ農業は、「白人の地主と黒人の農業労働者」という構図が存在していました。これは、かつての日本の「地主と小作人」の関係に似ていますね。

ムガベ政権は、黒人を優遇するために、黒人たちが白人の地主から農地を「奪う」ことを合法化してしまいました。この時の様子は、テレビのCNNニュースで見ていたのを覚えています。黒人の集団がクワなどを持って、白人の家に押しかけ、白人は「帰れ、帰れ!」と叫んでいました。

このようにして、黒人が力ずくで白人から農地を奪うことを黙認したため、白人の地主たちは国外に逃げてしまった者も多くいます。黒人は土地だけ取り返したものの、農業のノウハウについてはあまり知りません。そのために、それ以来ジンバブエの農業生産性は大きく低下し、食料が不足するようになったのです。
 

株式の強制譲渡で外資系企業が逃避

2007年9月に議会を通過した「外資系企業の株式強制譲渡法案」も、経済の混乱・インフレの進行に拍車をかけました。これは、ジンバブエに進出している外国企業の株式のうち、過半数をジンバブエの黒人に強制的に譲渡しなくてはならないという内容の法案でした。当然ながら、そんなことをされてはまともなビジネスができないので、外資系企業は一斉にジンバブエから撤退しました。これで外国企業の存在がなくなり、ジンバブエの物資不足はさらに深刻化します。

製品を強制的に安く売らせたことでインフレが決定的に

物資の不足、そしてインフレの進行を決定的にしたのが、2007年6月に出された価格統制令でした。これは、インフレ対策として、政府が「ほぼ全ての製品・サービスの価格を強制的に半額にする」というものでした。しかしながら、これは経済の基本を完全に無視しています。無理に半額で売らせても、企業(メーカー、小売店)は利益にならないからです。利益にならなかったら赤字になり、そのまま倒産してしまいます。

最初は様子を見ていた企業ですが、価格統制令に反して逮捕された者が出たというニュースが流れたら、一斉に商品を売るのを止めてしまいました。この時から、ジンバブエのスーパーなど小売店の棚はガラガラになっています。
 
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スーパーの棚。価格統制令のために、商品がまったく流通しなくなってしまった。

さらに多くのお店が、商品を売らずに倉庫に保管したままだったのですが、そのような商品の保管も違法として、違反したものは逮捕するという内容も含まれていました。これでは、企業は製品を製造したり仕入れることもできません。結局、倒産企業が続発し、ジンバブエの経済はさらに混乱、インフレは歯止めが効かなくなりました。

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