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企業のブランド力、「のれん代」はいくら?(2ページ目)

企業買収の際に話題に上る「のれん代」。目に見えないこの価値を金額で測るのはどうやって、何を基準に決めるのでしょう。

執筆者:石原 敬子

「のれん代」は、取り扱い注意

株価
投資家が認めたら、それがその企業の価値になってしまう
1990年代後半から2000年代に差し掛かかるITバブルの時、企業の株価は、企業の持つ「モノ」の価値の数百倍もの値段で取引されていました。その頃に投資家が評価したのはITに対する将来性でしたが、その期待も広がりすぎて、企業名に「ドットコム」や「ネット」と名がつくだけで評価されるようになってしまうようになりました。今や名前だけの「のれん」は剥げ落ちて、本当に成長する力のあるものだけが生き残っています。当時は、とても高い「のれん代」を上乗せした評価で株価をつけていたわけです。

このように、金銭的に評価することが困難な無形固定資産は、「のれん代」に限らず会計上の取り扱いが難しいものです。ところが、企業にとってはビジネスの上で重要で不可欠なものです。にもかからわず、特に「のれん代」はあいまいで評価をすることが困難な性質で、その評価次第で企業の業績が大きく変わることがよく起こるのでやっかいです。

また、一つ付け加えておくと、合併の際の会計処理には二つの方法があり、その違いは「のれん代」にも現れます。合併の際、合併される側の企業の資産・負債は、その資産を取得したときの帳簿価額で評価する「持分プーリング法」と時価で評価する「パーチェス法」の二つで、このうちの「持分プーリング法」では「のれん代」が計上されません。「パーチェス法」では現在の株式市場での価格と簿価との差額を「のれん代」として計上します。

さらに、「のれん代」は通常の決算の時には表に出ることはなく、企業の合併や買収、営業の譲り受けの時に限って資産に計上されるものです。

「のれん代」のこれから

昨今の報道でご存知の通り、日本の会計基準では、合併や買収などの「企業結合会計基準」が未だ整備されていません。「のれん代」の取り扱いについても同様で、例えば、「のれん代」の償却は実務上では企業ごとに処理期間がまちまちです。商法では5年以内、企業会計原則では20年以内とルールそのものがバラバラだからです。

そのため、企業会計基準委員会では「のれん代」の会計処理ルールを見直し、2006年4月から始まる会計年度からは、「のれん代」を原則として1年間で一括処理することは認めないということにしました。今後は資産が時価評価されるグローバルな会計制度に見習い、「パーチェス法」を用いる傾向になると思われます。となると、「のれん代」を計上するわけですから、見えない資産に対する厳正な評価基準とそれを見分ける目がますます求められることになるでしょう。

消費者としても、企業のブランド力を見極める目を持って、失敗の少ない商品の購入や企業への投資を行いたいものですね。


【関連サイト】

自己責任時代のガイドブック 決算書、読めたら何が分かる?
ライブドア堀江式ビジネスには一貫したロジックが! ライブドア堀江氏の“真の狙い”(All About「IT業界トレンドウォッチ」ガイドサイト)
「阪神ファンじゃなくても気になる!? 村上ファンドvs阪神電鉄(All About「オンライントレード」ガイドサイト)

【関連リンク】

「勝ち組や注目企業の戦略・株価・ポリシー(経営戦略・企業価値)」
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