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企業のブランド力、「のれん代」はいくら?

企業買収の際に話題に上る「のれん代」。目に見えないこの価値を金額で測るのはどうやって、何を基準に決めるのでしょう。

執筆者:石原 敬子

文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
この1年間、今まで以上に世間を賑わせた、企業買収。この時に聞く「のれん代」は、いったい何の価値で、何を基準に、どのように計算するものなのでしょう?
<INDEX>
ブランドを金額で表す「のれん代」(1P目)
「のれん代」は財産(1P目)
「のれん代」の価値はどうやって測るのか?(1P目)
「のれん代」は、取り扱い注意(2P目)
「のれん代」のこれから(2P目)

ブランドを金額で表す「のれん代」

ビル
企業買収に必要な資金は?「のれん代は」どうやって計算する?
「のれん代」とは、企業の資産の中の営業権のことです。企業の持つブランドやノウハウ、特許権など目に見えないけれども価値がある、というものを、会計の世界では「無形固定資産」といいます。「のれん代」すなわち営業権は、そのうちの一つです。貸借対照表の中では、借方の資産の部、固定資産として記載されています。

では、ここで貸借対照表のしくみを簡単に説明しましょう。

「のれん代」は財産

企業は、年に1回決算を行い、その都度貸借対照表(バランスシート)を作成します。その目的は、企業の決算時の財務内容を世間に知らせるためで、その内容は、企業が持つ全ての資産内容とその資金の調達方法が記載されています。

資産内容を示す貸借対照表の資産の部は、流動資産と固定資産に分かれます。

◎流動資産=換金しやすい資産
 ・現金や預金、売掛金、棚卸資産(在庫)、短期的に保有している有価証券など

◎固定資産=流動資産よりもう少し長い期間にわたって保有する資産
 ・形のある有形固定資産~土地や建物、機械類などの「目に見える資産」
 ・形のない無形固定資産、子会社株式など~特許権やソフトウェアという「目に見えない資産」
  ・法律上の権利=特許権、地上権、商標権、実用新案家、意匠権、鉱業権、ライセンス契約、ロイヤリティ契約など
  ・経済的な財産=文学作品、音楽的作品、絵画、写真などの芸術的価値、顧客リスト・顧客との契約、営業権(=「のれん代」)など  
このように、「のれん代」すなわち営業権は、形のないものですが、「資産」としての価値があるという位置づけになります。その理由は、企業が長い年月の間、他社と競争して行くためには欠かせない財産だからです。

「のれん代」の価値はどうやって測るのか?

そもそも無形固定資産を多く持っている企業は、それを持たない企業と比べると、その資源を活用できる分だけ収益を上げることができます。その商品だからこそ、人々は高いお金を払ってでも買おうとする、高い金額に見合う価値をその人が認めているから買う、という買い物は、誰にでも経験のあることでしょう。

ちょっと思い出してみてください。あなたは、その価値をどこから見出しますか?

・その商品やサービスが優れている
・その商品のコンセプトや企業の理念に賛同できる
・その商品やサービスはその企業でなければ作れない
・ブランド名が広く知れわたっており、安心して利用できる商品やサービスである
・自宅の近くで購入できる、などいつでも利用できる
・アフターサービスが充実している

これらの価値は、その企業に一朝一夕に備わったものではありません。地道な企業活動、企業努力から積み重なったものです。ある意味で、「のれん代」は時間と企業努力をお金に代えたものと言っても良いと思います。もっと広い意味では、将来性も含んでいると言えます。

企業の持っている固定資産はモノの値段ですから、その評価は客観的に決まります。ところが、過去の時間の積み上げや将来性の評価を数字にするのは難しいことです。そのため、買収の際の「のれん代」は、便宜上次のように計算されます。

(株式市場がつけた企業の値段)-(企業の持っているモノの価値)=「のれん代」
もう少し専門的に表現すると、
(買収金額)-(純資産)=「のれん代」
となります。

「のれん代」を測るのはムズカシイ!問題点と、これからについては次のページで!
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