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増資とは?融資とどう違う?(2ページ目)

資金面での企業の救済策として「増資」を行うというニュースをよく聞きます。増資とはどういうもので、融資とは何が違うのでしょうか?三菱自動車の例で理解していきましょう。

執筆者:石原 敬子

お金で会社を応援する

繰り返しですが、増資というのは資本を増やすことを指します。新しい資金を出してもらって、お金を新たに出してもらった引き換えに新しい株券を発行して、その新しい株主に株券を渡します。
東京三菱銀行
三菱グループの出す資金は赤字の穴埋めへ

三菱自動車が、資本を増やして、そのお金を三菱グループ3社に出してもらおうということを、新聞の見出し的に表記すると「三菱自動車資本増強、三菱3社に増資要請」となります。
今回、三菱3社に出してもらったお金は何に使うのかというと、2004年度の赤字分の埋め合わせのための資金です。

それでも、この増資分だけでは赤字の埋め合わせが足りないので、金融機関から借り入れもする、というのが融資を要請した2,400億円の部分です。
ただし、このお金は償還期限が来たら返済すべき資金です。一時的に、今年度の資金繰りをカバーすることができても、いずれは三菱自動車は金融機関にそのお金を返さなければなりませんので、償還期限までにはお金がかえせるよう事業を立て直さなければなりません。

「融資」が他人資本と呼ばれるのはこのためです。

今回の三菱自動車には、とにかく資金を出してあげないと大変なことになる、といわんばかりに三菱グループが資金を出していることは、皆さんにもご理解いただけることでしょう。
例えば、縁もゆかりもないあなたが、三菱自動車側に「いま苦しいので出資をしてもらえませんか?」といわれたとしたら、どうしますか?三菱3社は、グループ内に広がる影響を懸念して、出資の決断をしたわけです。

このように、その発行会社と縁の深い会社や、その会社の役員、取引先、資本参加している会社に新しい株を買ってもらう(というより引き受けるというイメージ)ことが多いものです。
この、ある特定の第三者に、新しく発行するその株式を買ってもらうことを「第三者割当増資」といいます。

いまや、すっかり元気を取り戻した日産自動車も、1999年にルノーの資本参加を受けたときには、この第三者割当増資を使っています。
消費者として、その会社を応援するというのは、その会社の製品を買うとか、そのお店で買い物をする、ということですが、増資は、お金を利用してその会社を応援することにつながります。

時代とともに移り変わる増資のスタイル

走るパジェロ
前を向いて走り抜けられるか?三菱
「増資」には、ポジティブな増資と、ネガティブ、というかディフェンシブ的な増資があります。

最近の増資といえば、ほとんどがディフェンシブな増資で、破綻寸前の会社を救うために行われます。ダイエーが産業再生機構とこれから決まるスポンサーへの増資、藤和不動産が三菱地所などに行う増資、UFJグループが行った三菱東京FGへの増資、・・・これら、企業の救済策として、新しく株式を発行してお金を出してもらう場合に、第三者割当増資が使われることが多いです。
それもそのはず、広く一般の投資家から資金を出してもらうことを募っても、お金は集まりそうにないケースばかりですからね。

増資の方法は他に「株主割当発行増資」と「公募発行増資」があります。
その時代背景を考えれば当然のことなのですが、面白いことに、この増資の方法は時代と共にブームがありました。
現在は、ご紹介したような「第三者割当増資」が圧倒的に多い増資の方法です。

この増資の方法については、その時代背景と一緒に経済を見ていくと、とても興味深いものがありますので、次回記事「良い増資、悪い増資」で、その特徴を整理してお届けします。

【関連サイト】
三菱自動車が大変だ(「株」ガイドサイト)
三菱自動車の適正株価!(「株」ガイドサイト)
第三者割当増資(All About「マネー用語集」)
“東京証券取引所”適時開示情報閲覧サービス
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