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長井さん射殺犯はどこまで処罰できるのか?(2ページ目)

9月27日、ミャンマーの治安部隊はデモ隊に対して発砲し、そこで日本人カメラマンである長井健司さん(50)が、治安部隊と思われる者によって射殺されてしまいました。この事件は、犯人を処罰できるのでしょうか?

執筆者:鳥羽 賢

ミャンマーとの間にはない、犯罪人引き渡し条約

ミャンマーの国旗
ミャンマーの国旗。歯車と稲穂は社会主義を表している。
そしてもう1つ気になるのが、実際に犯人が見つかっても、それがスムーズに引き渡されるのかという問題です。犯罪人がある国から他の国に引き渡しされるにあたって、多くの国同士では、2国間の犯罪人引き渡し条約が締結されています。

ところが日本の場合は、犯罪人引き渡し条約が締結されているのは、アメリカと韓国のたったの2国だけです。これは世界的に見ても、かなり少ない部類に入ります。犯罪人引き渡し条約がなければ、ミャンマーから日本に引き渡すにしても、裁判所の決定などかなり時間がかかることになるでしょう。

どうなる?!今後の2国間関係

今回の事件をきっかけとして、日本とミャンマーの関係がしばらく冷え込んでしまう可能性も少なくありません。というのも、日本政府はすでに今回への抗議として、ミャンマーへの経済援助を削減すると発表しているからです。

ミャンマーは現在のところ、日本との貿易額もそれほど多くありません。また日本がそこから石油を輸入しているような国でもありません。しかし同じアジアの国ですし、関係が悪化することは決してよいことではないでしょう。

それよりも、今回の騒ぎの後に「在日ビルマ人難民申請弁護団」という団体が、日本の法務省に「(ミャンマーからの)難民を積極的に受け入れて欲しい」などと申し入れていたことが分かりました。

世界には難民条約(正式名称:難民の地位に関する条約)というものがあり、それは1951年に国連で採択された、国家間の難民に関する取り決めを盛り込んだ条約です。日本も、1981年に加入しています。

しかしそれ以来の日本の行動を見ると、アメリカやフランスといった他の主要国に比べて、難民受け入れ数が極端に少ないままきています。この点を見据えつつ、同団体は1990年代から日本にミャンマーからの難民受け入れ依頼を続けてきています。

→次ページ。そもそも今回の騒ぎの根本的な原因は……?!
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