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★2002年★経済キーワード【2】 経済とオリンピック(2ページ目)

「オリンピックは儲かる?」「オリンピックの翌年は景気が悪くなるというジンクスは本当?」など、経済の視点からオリンピックを考えます。

執筆者:石川 秀樹

 【オリンピックの翌年は景気が悪くなるというジンクスは本当か?】

「オリンピックは儲かるか」というお話をしましたが,オリンピックには、それ自体の儲け以外にも、景気をよくする効果があるといわれます。

これは、オリンピックのために施設建設などを行なえば、建設需要が出ますし,観光客が来れば観光客の消費需要が生まれます。そのように需要が増えれば、開催地の景気にはプラスに働きます。2008年の北京オリンピックは中国の経済成長率を毎年0.3~0.4%増やすと中国政府は予測しています。

しかし、仮に大阪で開催したとしても、それほどの効果は上がらなかったと考えられます。なぜなら、現在の日本の経済規模は非常に大きいので,日本経済全体からすればオリンピックの需要はわずかなものだからです。

そして、オリンピックが終われば、オリンピックの需要はなくなるので、企業の注文は減り、景気は悪化の方向に作用します。ですから、「オリンピックの翌年は景気が悪くなるというジンクス」は経済的に根拠のあることなのです。

事実、東京オリンピックの後、日本は「40年不況」という不況に陥りましたし、ソウル・オリンピック後の韓国、バルセロナ・オリンピック後のスペインもオリンピック後、景気が悪くなりました。オーストラリアも同様に、前回のシドニー・オリンピックまでは年4%ペースの経済成長でしたが、2000年後半、つまり、オリンピック終了を境に、経済成長率は1~2%へ低下しています。

しかし、例外もあり、1996年アトランタ・オリンピック後のアメリカは景気が悪くなりませんでした。これは、アメリカは経済規模が大きいので、オリンピックの影響はそれほど効いてこないことと、当時のアメリカには、オリンピックとは別に「IT革命」という力強い景気のけん引役が存在したことによるものと考えられます。

オリンピック=巨大な公共工事!?
以上のように見ていくと,オリンピックというのは,巨大な公共工事であるという面が見えてきます。ですから、先々のことをよく考えて行わないと,宴の後には不況になり、不要になった巨大施設や必要以上に立派な道路、そして、財政赤字が残ることにもなりかねません。

1兆円も、2兆円も使うのであれば、全家庭を光ファイバーで結んだり、パソコンを無償支給し、IT教育を無料で受講させることもできます。将来まで考えて、その都市の経済が活発になるもっと有効な方法もあるのではないでしょうか。


以上、オリンピックを経済的視点から考えてみましたけれども、オリンピックには、平和の祭典としての意義や、純粋な感動があります。難しい話はさておき、まずは、ソルトレイクシティー・オリンピックを楽しみましょう!!



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