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オリンピックは「政治」か「商業」か

いよいよ迫ってきたソルトレーク五輪。これを機に、オリンピックと政治とのつながりについて、歴史を踏まえて解説してみることにしました。オリンピック前でも後でも、ぜひ。

執筆者:辻 雅之


(2002.1.23)

1ページ目 【はじめに】
【発展したメディアがオリンピックと政治を結び付けた】
2ページ目 【深刻化したオリンピックの「政治化」】
3ページ目 【オリンピックの商業化は「脱政治化」の切り札か?】
【終わりに】

【はじめに】

人類が生んだもっとも巨大なイベント、オリンピック。その巨大さゆえ、オリンピックは幾度となく政治に翻弄(ほんろう)、利用されてきたといわれます。

今回は100年あまりの近代オリンピック史を、下のように3つに区分しながら、オリンピックと政治との関係をやさしく解説していこうと思います。
 

【発展したメディアがオリンピックと政治を結び付けた】

第1回アテネ五輪が開催され近代オリンピックがスタートし、発展していった19世紀末~20世紀前半は、同時にマス=メディア、マス=コミュニケーションが飛躍的に発展していった時代でもありました。

というより、メディアの飛躍的な発展がオリンピックを世界一のイベントに押し上げていった原動力であったということかもしれません。

当初のオリンピックは万博の付属イベントだったり、個人参加がOKだったりと、けっこうこじんまりとしたものだったようです。当時の資料を見ると某局の「筋○番付」のような雰囲気。7歳の子が金メダルをとったこともあるくらいの規模だったのです。

しかし第1次世界大戦後、世界各国の一流選手が一同に集まるというイベント性、「平和と民族の祭典」であるというコンセプトが脚光を浴びはじめ、オリンピックは世界有数の大イベントへと発展していきました。

このプロセスのなかで、マス=メディアの飛躍的な発展がオリンピックの成長に貢献したことはいうまでもありません。

大量印刷技術の発展から始まり、写真の電送、ラジオやテレビの普及、衛星中継技術の発達・・・これらの技術によってオリンピックの魅力がより効果的に、全世界の人に広めることが可能になったといえるでしょう。

もし近代オリンピックがメディアの未発達な19世紀に始まっていたら・・・ほそぼそと数回行われたのちに終了、ということになっていた可能性は十分あったと思います。

しかし、オリンピック発展に貢献したメディアとの接近は、同時にメディアを政治利用しようとする流れに巻き込まれていきます。

一度にたくさんの人に思想を伝えることを可能にするマス=メディアは、政治家が国民をコントロールするのに都合がよかったのです。実際、1930年代ドイツとアメリカで政権を握っていたヒトラーとルーズベルトは、ラジオを実に効果的に使って国民からの支持を集めました。

ヒトラーはこのメディアの力をフル動員し、大会をドイツ民族やナチスの優秀性をアピールするべく巨額の費用を投じるのでした。この効果のほどはさておき、スポーツやオリンピックが政治的事業として利用できることが示されたこと点でベルリン大会は画期的なものになったといえます。

次のページでは、第2次世界大戦後さらにふかまるオリンピックと政治との関係とその弊害についてみてみましょう。

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