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ハリウッドの資金調達。スクリーンの裏で…(3ページ目)

ハリウッド映画の製作には、日本円で100億円を越す莫大なお金が費やされます。そんな大金をハリウッドの製作会社はどのようにして集めているのでしょうか?

執筆者:鳥羽 賢

著作権をドイツの会社に売却して控除適用可とする

ドイツ
ドイツで製作費が集められた。写真提供p-fan.net
そこで上手く法の抜け道を利用するのです。ドイツの法律でいう「ドイツの映画製作会社」とは、つまり映画の著作権を持っているドイツの会社なのです。そこで、ハリウッドは『トゥームレイダー』の著作権をドイツの企業に売り、ドイツ人投資家が税金の控除を受けられるようにしました。

でもそのままでは、著作権がドイツの企業に残ったままで、自分達が製作した映画と言えなくなってしまいます。そこで今度は、そのドイツ企業から著作権を「リース」という形で取り戻すのです。また、後日には正式に著作権を買い戻せるような決まりも作成しておきます。

これでハリウッドが製作する映画なのに、ドイツの投資家が税制面で控除を受けられることになりました。こうやって『トゥームレイダー』の製作資金は集められていったのです。また『トゥームレイダー』以外でも、同じような方法でドイツの投資家から資金が集められるケースが何回もありました。

しかしドイツ政府は、ハリウッドのこのやり方が気に入らないようです。昨年秋に成立したメルケル政権は、ドイツにおける資金調達を止めさせるために、税制を変更しようとしています。

イギリスでも同様の手法、そして日本は…

また『トゥームレイダー』は、イギリスでも同様の方法で資金調達をしました。イギリスの場合は、税制面で控除を受けるためには、イギリス国内で撮影が行われていること、イギリス人の俳優を何人か採用していること、などが条件になっています。ハリウッドは、資金調達のためにそれを満たすようにしました。

このように、ハリウッド映画の製作費は、アメリカ国外からも幅広く集められているのです。では日本ではどうでしょうか?最近は株式投資ブームですが、日本人にとって「投資」はまだなじみの薄い概念です。アメリカではベンチャー企業に投資しても控除が受けられるのですが、日本ではそれもありません。まして、映画に投資して控除が受けられる制度は、かなり登場する可能性は低いでしょう。

それでももしそういった制度が日本にできれば、ハリウッドがそれに目をつけて日本の投資家から資金を集めようとするかもしれません。映画好きなら、ただ映画を観るだけではなく、製作資金に投資してみるのも面白いと思うことでしょう。将来そういったものが実現する日がくることを願いましょう。

【関連サイト】
「アメリカ等海外の映画会社の公式サイト」(All About 映画)
「配給会社(米国・英語)」(All About 映画で学ぶ英会話)
「深海3650mを3D体感 ジェームズ・キャメロンの 『タイタニックの秘密』 」(All About 映画)
「ハリウッド史最も絢爛豪華な…総制作費2百億円 『アレキサンダー』プレゼント」(All About 映画)
「アンジェリーナ・ジョリーと監督も緊急来日 トゥームレイダー2 ■大特集■」(All About 映画)
「村上ファンドとフツーのファンドは何が違う」(All About よくわかる経済)
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