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決算書で売主の「破綻リスク」をチェック(2ページ目)

またも大手不動産会社の経営破綻が報道されました。購入したマンションの売主が倒産してしまったらと思うと、気が気ではありません。事前に経営状態を把握するため、決算書のチェックポイントを覚えておきましょう。

大森 広司

執筆者:大森 広司

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在庫が売上高の何日分あるかを確認

企業の経営破綻は資金繰りの失敗によるものがほとんどですが、借金が多くても売上高が確保されていてきちんと返済できていればなにも問題はありません。その意味で売上高の数字は重要ですが、経営上のリスクを判断するには棚卸資産、つまり在庫の水準が適正かどうかを読み取ることが有効です。なぜなら現時点で売り上げが順調でも、相場変動などで在庫の価格が急落すると借金の返済原資の確保や新たな資金調達が困難になる可能性があるからです。

そこで注目すべきなのが貸借対照表の棚卸資産です。棚卸資産という項目で記載されている場合もありますが、「販売用不動産」「仕掛販売用不動産」などに区分されている場合もみられます。この棚卸資産の額を損益計算書の売上高で割り、365(日)をかけたものが「棚卸資産回転日数」です。この数字は在庫が売上高の何日分あるかを示したもので、数字が大きいと在庫が過剰気味となるリスクが高まります。ちなみに上場不動産業(分譲)の平均は200日強です。破綻した3社の数字をみると、いずれも1年分の売上高を超える在庫を抱えていたことが分かります。

■棚卸資産回転日数
(単位:日)

  2005.3期 2006.3期 2007.3期 2008.3期
ジョイント・コーポレーション 376.16 373.85 403.93 439.02
日本綜合地所 --- 233.87 376.70 377.74
アーバンコーポレイション 286.69 342.90 370.71 547.29


営業キャッシュフローと財務キャッシュフローに注目

経営上のリスクを判断する際には、キャッシュフロー(CF)計算書のチェックも欠かせません。CF計算書は現金の流れを示す資料なので、日々の資金繰りの状態が読み取れるからです。ただし数字のブレが大きくなりがちなので、単年度だけでなく数年度にわたる推移を確認する必要があります。

CF計算書では「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」と「財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)」の数字に注目しましょう。営業CFは「商売で稼いだ現金」、財務CFは「借金や増資で増えた現金」といった意味です。3社の数字をみると、いずれも営業CFは大幅なマイナス、財務CFは大幅なプラスが続いていました。売上高や利益が確保されていても、手元の現金が不足しているため借金をして税金や配当を支払っていたわけです。

■キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローの額
(単位:百万円)

  2005.3期 2006.3期 2007.3期 2008.3期
ジョイント・コーポレーション △ 48,329 △ 18,851 △ 60,339 △ 33,306
日本綜合地所 △ 3 △ 26,474 △ 15,907 △ 40,670
アーバンコーポレイション △ 24,995 △ 32,991 △ 55,033 △ 100,019


■キャッシュフロー計算書の財務キャッシュフローの額
(単位:百万円)

  2005.3期 2006.3期 2007.3期 2008.3期
ジョイント・コーポレーション 43,497 21,799 58,342 37,855
日本綜合地所 673 50,540 43,874 42,076
アーバンコーポレイション 40,233 43,043 83,210 89,212


不動産業界は借金をして土地や建物を仕入れるため、営業CFがマイナスで財務CFがプラスという状態は珍しくありません。とはいえ上場不動産業(分譲)の平均は営業CFがマイナス100億円弱、財務CFがプラス200億円強ですから、3社とも金額が大きすぎたといえるでしょう。

このように決算書をみると破綻リスクの高い経営状態かどうかを読み取れる場合があります。もちろん、数字上のリスクが高いからといって必ず破綻するわけではありませんが、ひとつの目安にはなるでしょう。マンション購入を決める際には、売主の決算書もチェックしてみることをお勧めします。


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