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決算書で売主の「破綻リスク」をチェック

またも大手不動産会社の経営破綻が報道されました。購入したマンションの売主が倒産してしまったらと思うと、気が気ではありません。事前に経営状態を把握するため、決算書のチェックポイントを覚えておきましょう。

大森 広司

執筆者:大森 広司

マンション入門ガイド

またも大手不動産会社の経営破綻が報道されました。購入したマンションの売主が倒産してしまったらと思うと、気が気ではありません。事前に経営状態を把握するため、決算書のチェックポイントを覚えておきましょう。

不動産流動化事業の落ち込みが破綻の引き金に

5月29日に会社更生法の適用を申請したジョイント・コーポレーションはマンション分譲を多く手がけるデベロッパーで、負債総額は子会社も含めて1,680億円でした。東証1部上場のマンション・デベロッパーとしては、2008年8月のアーバンコーポレイション(負債総額2,558億円)、2009年2月の日本綜合地所(同1,975億円)に次ぐ規模といえます。

ジョイント・コーポレーションが破綻した背景には、同社が近年力を入れていた不動産流動化事業の業績が急速に悪化し、資金繰りに行き詰まったことが挙げられます。不動産流動化事業とは、オフィスやマンションを開発・リニューアルして投資家に売却する事業のこと。いわゆるファンド相手のビジネスで、景気回復による“ミニ・バブル”で市場規模が急速に膨らみ、昨年夏のリーマン・ショックなどを機に「バブルが弾けた」といわれています。

同社でも2008年3月期までは不動産流動化事業が順調に業績を伸ばし、同期の売上高は“本業”である不動産分譲事業の2倍以上の1,161億円に達していました。ところがミニ・バブル崩壊でファンドが市場から撤退すると開発物件の買い手がいなくなり、売り上げが落ち込むとともに借金の返済が滞ってしまったわけです。

貸借対照表から借金の増え方をチェック

不動産流動化事業の落ち込みよる経営破綻という点では、アーバンコーポレイションのケースと共通しています。しかし日本綜合地所の場合は不動産流動化事業をほとんど手がけておらず、急成長したマンション分譲事業の業績不振で資金繰りが悪化したケースです。

いずれにしろ、急激な事業の拡大で借金が膨らんだことが破綻につながった点では、各社とも共通しています。決算書で売上高の数字を見ると順調に業績を伸ばしているように見えても、一方で借金も急増するというリスクの高い経営状態となっていたのです。

そうした資金繰りの様子は、貸借対照表に記載された「有利子負債(短期借入金+長期借入金+社債など)」の額の動きから読み取れます。ここ数年の推移を見ると、破綻した3社はいずれも金額が急速に拡大していました。

■貸借対照表の有利子負債の額
(単位:百万円)

  2005.3期 2006.3期 2007.3期 2008.3期
ジョイント・コーポレーション 94,872 111,789 173,682 218,190
日本綜合地所 49,702 91,406 127,545 180,519
アーバンコーポレイション 68,918 89,893 294,681 407,976
※『日経 経営指標2007』『日経 経営指標2009』(日本経済新聞出版社)より(以下同)

また、同じ貸借対照表の自己資本(純資産とほぼ同じ)から「有利子負債対自己資本比率(有利子負債÷自己資本×100)」を見ても、3社とも数値が大きくなっていることが分かります。この数値は調達資金のうち返済不要の自己資金に対して、返済を要する有利子負債がどの程度の比率かを示すもので、数値が200(%)を大幅に超えると借金過多といえる状態です

■有利子負債対自己資本比率
(単位:%)

  2005.3期 2006.3期 2007.3期 2008.3期
ジョイント・コーポレーション 281.77 181.52 234.75 280.68
日本綜合地所 272.97 337.06 282.18 432.25
アーバンコーポレイション 194.38 134.90 331.78 370.06


次ページでさらに決算書のポイントを解説しましょう。

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